Profile フォトグラファー mush (植田 めぐみ)

静岡県出身。高校3年生でハマったスノーボードをきっかけに、28歳の時に独学で写真を学び、スノーボードフォトグラファーとしてキャリアを開始する。冬季は上信越をベースにスノーボーダーの撮影を行っていた。33歳の時、富士山の美しさに開眼。山小屋で働きながら日々、その姿を写真に収めるようになる。同時に、富士登山にまつわる情報を積極的に発信。写真と情報で安全登山の啓発活動を行っている。3年前から冬場の拠点を宮城県蔵王町に移し、樹氷の写真を撮りながら現地ガイドとして活動している。登山にまつわるトークショー、イベントへの出演多数。2016年よりKEENアンバサダーに就任。

SCENE 01

蔵王連峰の麓に広がる大雪原
純白の"モンスター”を探して

雄大な蔵王連峰の東麓に佇む、宮城県蔵王町。この町の象徴が、蔵王刈田岳・熊野岳・五色岳の三峰に抱かれた火口湖の御釜と冬季の樹氷である。樹氷とは世界的にも稀な自然現象で、国内でも青森県八甲田、秋田県八幡平などごく限られたエリアでしかお目にかかることができない。中でも宮城蔵王で見られるアオモリトドマツの樹氷は「スノーモンスター」と呼ばれ、このエリアの冬の風物詩として親しまれてきた。  

このスノーモンスターに魅了されたのがフォトグラファーのmushさんだ。夏季は富士登山口のトレイルステーションに常駐、富士登山にまつわる知識や体験を発信するなど安全登山を促す啓発活動で知られるが、スノーシーズンはここ、宮城蔵王の「すみかわスノーパーク」にて樹氷ガイドとして活躍している。  

  3年前、震災後初めて東北を訪れたというが、その爪痕の大きさに震撼した。
「復興までの道のりはまだまだ遠いって、改めて実感したんです。建築や土木など何のスキルもない私ですが、何かできることがないかって考えあぐねていた時、たまたま出合ったのが樹氷でした」

SCENE 02

吹雪と濃霧の間の一瞬
心を震わす、最高のタイミング

氷点下10度を下回る猛吹雪の中、広大なパノラマに突如現れる純白の造形美。気温や降雪はもちろん、厚い雲の合間から差し込むほんの一条の光、風のひと吹き。些細な条件で、樹氷は全く異なる表情を見せる。何日間も通い詰めて、それでも濃霧に阻まれることもある。同じものをもう一度見たいと思っても、同じ姿にはもう二度とお目にかかれない。その瞬間、そこに行き合った人だけが目にできる貴重な自然美。だからこそ心動かされ、その一瞬が特別な体験になる。

  「私のなかで、蔵王の樹氷はどこか富士山の姿と重なりました。毎日出かけても日々、新しい発見があるんです。毎日眺めても見飽きない。天候に阻まれて目にすることができない日もある。だから出現した時の感動がよりいっそう深まるんです」

SCENE 03

対象となる土地に暮らすことで
写真はよりリアルになる

たくさんの人に樹氷を知ってもらい実際に足を運んでもらうため、この神秘を自分の写真で伝えたいと考えるようになった。ただ美しいだけの写真ではなく、吹きすさぶ風の冷たさ、雪原に差し込む太陽の暖かさ、実際にそこに居合わせたようなフィーリングまでも写真で表現したいという。そのためには、「暮らし」の視点が必要だというのがmushさんのポリシーだ。

「私にとっての写真って、アートや自己表現の手段ではなく、コミュニケーションツールなんです。写真をきっかけに雪原へ足を運んで欲しい、そして樹氷を直に目にしてもらいたい。だから写真家ではなく樹氷ガイドとしてこの地と深く関わりたいと思いました。ガイドとして直接、情報を伝えたりコミュニケーションを図ったりできれば、この地の過酷な環境とそこで育まれる自然美をより深く伝えることができるはずだから」

蔵王での暮らしも3シーズン目を迎え、現在はガイドの傍ら、ツアーに使う雪上車の運転、その周囲の環境の保全作業にも携わる。被写体に至るまでのプロセスをも日常とすることで、その写真は一層スペシャルなものになる。

SCENE 04

「また来たい」と思わせる、
プロフェッショナルなガイドを目指して

「限られた人数しか受け入れられないけれど、わざわざここまで来てくれた人たちに120パーセント楽しんでもらいたいから、私たちスタッフはみな精一杯お手伝いをしたいと考えています。もちろん、天気が悪くて見られないこともあります。そんな時でも『また来よう』と思ってもらえるよう、行程さえも楽しんでもらうのがガイドの務め。ゴールはもちろん、プロセスの魅力をも伝えられるようなプロフェショナルになりたいですね」

写真とガイディングで樹氷の魅力を少しでも多くの人に伝えることが冬のライフワークだというmushさん。それが彼女なりの復興支援なのだ。

Location

撮 影 地 情 報 撮 影 地 情 報

Z A O - 蔵 王 -

宮城県蔵王町
山形県と宮城県、それぞれの南部県境に位置する蔵王連峰は、標高1841mの熊野岳を主峰に抱く活火山。東北を代表する風景として知られている。その裾野に位置するのが宮城県蔵蔵王町で、エメラルドグリーンに輝く火口湖、通称「御釜」など、蔵王連峰に連なる美しい景観に恵まれている。中でも冬場は、まるで片栗粉のようなドライパウダーがシーズンを通して楽しめることから、スノーアクティビティ愛好家に人気が高い。

交通

東京からは新幹線を利用して白石蔵王駅までおよそ1時間56分。車の場合、東北自動車道浦和インターチェンジから白石までおよそ3時間45分、村田インターチェンジまでおよそ4時間。
仙台からは高速バスが運行しており、仙台市から遠刈田温泉までおよそ1時間15分。一般道を利用した場合、およそ1時間。

後  編  へ

※ウィンターアクティビティを安心して楽しんでいただくために、安全面にご注意の上、くれぐれも自己責任の範囲で経験豊かな指導者のもと行ってください。また周りの邪魔や迷惑にならない所、許可された場所で行ってください。
※許可された場所で撮影しています。
※スタッドレスタイヤを装着しています。 撮影車両のため一部仕様が異なります。