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2015/8/20

新型PHEV開発スタッフインタビュー!継承される三菱独自の「オールホイールコントロール(AWC)」思想とは?

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7月に富士スピードウェイで開催された、ランサーエボリューション「FINAL EDITION」と新型アウトランダーの報道向け試乗会。ランサーエボリューションの登場から23年、そのモデル集大成といえる「FINAL EDITION」のサーキット試乗会ともあって、会場は興奮に包まれていました。
ミツビシモータース メールマガジン編集部は、この試乗会でランサーエボリューション・新型アウトランダーの開発スタッフへインタビューを敢行。取材を通じて感じたのは、三菱が目指した独自の「オールホイールコントロール」思想が、次のクルマにもしっかり息づいているということでした。


ランサーエボリューション「FINAL EDITION」と新型アウトランダー(ガソリン車)、この2台の接点を探るべく、それぞれの開発に携わったスタッフから話を聞きました。
高性能4WDスポーツセダンとプレミアムツーリングSUV、この2つをつなぐキーワードは「オールホイールコントロール(AWC)」でした。

開発スタッフ プロフィール

平山 敦朗商品戦略本部 商品力評価部 プロダクト評価 エキスパート

自動車の乗り味に関連した静的評価や初期品質評価関連のCS評価を担当後、現在の動的、静的を含めた車両全体のフィーリング評価に従事。2008年以降はすべての三菱車の評価を行う。

上平 真開発本部 C&D-seg 商品開発プロジェクト 主任

2004年からランサーエボリューションXの商品開発を担当しエボXの07年型から11年型までを担当。「FINAL EDITION」で採用されたナトリウム封入バルブは、当時、幻のXIで計画した1アイテムであった。2010年から現在まではアウトランダーPHEVの商品開発に従事しフルタイム4WD化やS-AWC(車両運動統合制御)採用に尽力した。

高橋 直樹開発本部 パワートレイン設計部 ドライブトレイン設計 主任

入社以来、駆動系コンポを担当。エボVIIIでAYCの構造を大幅に改良しトルク移動量を増大したS-AYCを開発。エボXで従来の制御システムを刷新したS-AWC(車両運動統合制御)を開発するなどした後、デリカ、アウトランダー、RVRなどFF系4WDシステム全般を担当している。

渡邊 敦彦開発本部 C&D-seg 商品開発プロジェクト

商品開発プロジェクトにて、ランサーエボリューションVIII MR以降、IX、ワゴン、IX MR、ワゴン MR、ランサーエボリューションXの開発取りまとめに従事。2009年よりRVRの開発取りまとめを担当した後、2014年にエボリューション担当に復帰し、「FINAL EDITION」の企画構想・開発の取りまとめを行う。

ランエボのS-AWCは、意のままの操縦性と卓越した安定性の進化

― ランエボというクルマは、どういう方向性を持って、何を目指して進化を続けたのでしょうか?

渡邊:ランエボが目指したのは、「オールホイールコントロール」による、高性能を意のままに操る心地良さです。「意のままの操縦性」と「卓越した安定性」、この2つの思想につきると思います。
ドライバーが「運転がうまくなった」と感じるような、そして違和感なく安全に安心して走れるために何が必要か、次のモデルの進化を考え続けたクルマだと考えています。

― ランエボが進化の中で得た、もっとも強力な武器は何でしょう?

渡邊:ランエボIVで搭載した「アクティブヨーコントロール(AYC)」だと思います。クルマの旋回姿勢を駆動力差で制御する機構の登場で、4WDは曲がらないといったこれまでの常識を覆しました。これを抜きにして、ランエボの進化は語れないでしょう。

平山:AYCの登場は、走りの進化という意味ではエポックメイキングでしたね。ランエボIVでAYCが搭載され、それがランエボVでボディの拡幅を経て、コンペティションにおける競争力が一気に向上したと思います。これが、ランエボIXまでの間でさらなる進化と成熟を繰り返しました。
ランエボXでは、全体の質感向上を図りましたので、今日のようなサーキット走行も十分の性能を発揮する一方、一般道でも静粛性や乗り心地等の快適性のレベルアップを感じていただけると思います。

― ランエボXの特長とは、そしてあまりスポーツ走行をしない一般ユーザーがエボに乗るメリットとは、どのような部分でしょうか。

渡邊:ランエボXでは、誰もが安心して走りを楽しめるクルマを目指し、さらに上質な走りを追求しました。今までのランエボは、サーキット走行をする方だけ、あるいはモータースポーツに参加される方だけのクルマだと思われがちでした。このユーザーの裾野を、ランエボXで広げたいと思いました。
「FINAL EDITION」では5M/Tしか選べませんが、2ペダルのTC-SSTではスポーツかつイージードライブを実現しましたし、成熟した4WDシステムのおかげで、スポーツ走行の経験が少ないドライバーでも、運転が上手になったと感じられ、かつ安心・安全に走れるのが、ランエボXの真骨頂ではないでしょうか。
上手に走らせようとか、カッコよく走らせようとかを意識しなくても、それができてしまう。現在の車両状態を常時センシングし、それをドライバーの理想の車両状態に近づける制御を常に行うことで、誰もが意のままの走りができるのがランエボXの凄さだと思います。

高橋:例えば、ステアリングを切るタイミングが理想より遅くても、それをアシストしてくれるのがスーパーオールホイールコントロール(S-AWC)ですし、一方でプロドライバーが的確な操作をする場合には、電子制御は介入しません。行きたいところを目指してアクセルを踏み、ステアリングを切れば、クルマが応えてくれるのが、ランエボXのS-AWCです。よって、ドライバーは運転が上手になった、と感じるでしょう。

平山:ドライバーが思った通りに走る、つまり走りに余裕が生まれることで、同乗されるご家族や友人の方も、不快な思いをしないというメリットがあると思います。
ランエボXは「FINAL EDITION」になって、静粛性が向上したのも大きなポイントでしょうね。また、エンジン出力のアップでクルマとしての基礎体力が向上しましたから、カスタマイズする楽しみも増え、より長く乗っていただけるようになったのではないでしょうか。

― ランエボの進化で得られた技術や思想は、他のクルマ・・・特にラインアップ豊富な三菱SUVにどのように生かされるのでしょうか?

平山:ランエボはどのような路面でも4輪のタイヤ能力をバランス良く最大限に発揮させ「意のままの操縦性」「卓越した安定性」をS-AWCを使って求めてきました。アウトランダーやアウトランダーPHEVにもランエボで培ったS-AWCの技術や思想が使われています。
例えば、天候の急変や路面状況の変化に応じて、ドライバーが意図せずとも、クルマ側が最適な制御を行って、乾燥している路面と変わらない走りができる、安全に安定した走行ができる、というのが、SUVにおけるS-AWCの大きな効果でしょうね。
さらに三菱のAWCは、ドライバーが意図した通りにクルマが動き、その制御が違和感なく作動してくれる、常にドライバーに寄り添ってくれるのが大きな特長だと思います。

上平:SUVをお使いのユーザーには、たくさんの人や荷物を載せて、より遠くまで、よりアクティブにカーライフを楽しんでいただきたいと思います。
セダンと異なり車高の高いSUVにおいても、知らない土地で刻々と変化する路面状況に対応し、より安全に、より安心してドライブを楽しんでいただきたい。そのためにS-AWCがあり、先進の安全機能がある。というのが、新型アウトランダーです。

クルマを常に安定させる、新型アウトランダーのS-AWC

― 新型アウトランダーには、オプションですが「S-AWC」搭載車が選べます。この機構の特長を教えてください。


S-AWCドライブモードセレクター*


●撮影のために点灯

上平:SUVで遠出をすると、知らない道を走る機会も多いと思います。天候や路面状況は刻々と変化し、滑りやすいコンディションも現れます。
通常のスタビリティコントロールやトラクションコントロール(三菱ではASCと呼びます)では、クルマが滑り始めてからフィードバック制御が働き、その動きを補正するものです。しかし、そこにはわずかですがギャップが生じ、クルマの動きに乱れが発生します。
しかし、新型アウトランダーの「S-AWC」は、クルマが滑り始める前から、そうならないように制御が働き、クルマを常に安定させる。ステアリング角に対してのクルマの動きをクルマが判断し、イメージする走行ラインをトレースするよう、自動的にコントロールする。つまり、どのような路面状況でも、ステアリングを切った方向にクルマがしっかり動いてくれる、というのが「S-AWC」の凄さだと思います。
また、万が一の衝突回避動作においても、クルマの姿勢が乱れることなく、ステアリングの操作にクルマが即座に反応してくれます。日頃の運転の安全レベルが大いに向上するというメリットもあると思います。
ランエボでは、この「S-AWC」をスポーツ走行でクルマを意のままに動かすことへ活用していましたが、新型アウトランダーでは通常走行で思いのままの運転を実現し、かつ安全レベルの向上により安心してドライブができるということを実現しています。

*S-AWCを装着した場合、ドライブモードセレクターはS-AWCドライブモードセレクターに変更となります。

ランエボの技術を応用した秀逸な「アクティブフロントデフ(AFD)」

― 新型アウトランダーの「S-AWC」では、どのような技術が使われているのですか?

高橋:「S-AWC」を具現化するための制御技術は、ランエボも新型アウトランダーも基本的には共通です。ドライバーの理想の車両状況に近づけるために、各コンポーネントを最適制御します。
ランエボでは、ACDとAYC(AYCデフ・ブレーキ)を統合制御しているのですが、新型アウトランダーでは電子制御カップリングとAYC(アクティブフロントデフ(AFD)・電動パワーステアリング・ブレーキ)の統合制御で行っています。
このAFDは、他社にない三菱独自の技術で、滑りやすい路面状況でも主駆動輪となる前輪をグリップさせることができ、走破性や安定性が大きく向上します。これは、ランエボで培った技術が生かされている好例であり、ランエボの進化なくしては生まれなかった技術です。

上平:新型アウトランダーの「S-AWC」は、AFDという電制デフをフロントに備え、機構や機能としてはランエボとアウトランダーPHEVの中位に位置する高性能な4WDとなっています。AFDのおかげでトラクション性能が向上し、クルマの動きをより積極的にコントロールできます。
また、コーナリング時の安定性や旋回性を向上させるため、1輪または複数の車輪へのブレーキングを行うブレーキAYCも搭載。つまり、現時点でランエボの技術や思想をもっとも色濃く反映したクルマが、新型アウトランダー・新型アウトランダーPHEVといえるでしょうね。

― その他、新型アウトランダーの走りの特長は?

平山:走りの質感のレベルアップを図り、静粛性や乗り心地が大きく向上していると感じられるはずです。普通の道をクルージングすると、とても静かで快適で、クルマの不用意な動きがないことが大きな美点だと思います。

上平:今回の新型アウトランダーの改良内容は、エクステリアデザインの大胆な変更は見た目にアピールできるポイントですが、中味については、デザイン以上に進化させました。
通常、コーナリング性能を向上させると、サスやバネを締めて硬くすることが多いため、乗り心地は悪くなりがちですが、新型アウトランダーはボディ剛性アップに加え、サスの最適化やフロントクロスメンバーの新作、リヤショックの容量アップまで、かなり大きな改良を行いました。これにより、コーナリング性能の向上と、大幅な乗り心地の向上を両立させています。
静粛性については、レベルをPHEVに近づけるために、前のモデルではPHEV専用としていた吸音材等をそのままガソリン車に移植しました。これにより、他車と比べても圧倒的に静かになったと感じられると思います。また、新世代のCVTを採用して制御を改良することで、車速とエンジン回転数の感覚が人間のフィーリングによりマッチするようになりました。エンジンとCVTとの適合性も向上し、この部分の進化による静粛性向上も大きいと思います。

通常なら2〜3年にわたって開発に取組む内容を、たった1年の期間に凝縮したので、我々開発スタッフにとっては、かつてないほど大変な作業でした。その甲斐あって素晴らしいクルマになりましたし、進化の幅と価格を比べたら、すごいバーゲンプライスになっていると思いますよ(笑)。

ランエボで磨き上げた、4輪の駆動力・制動力の制御を軸とした、三菱自動車の車両運動統合制御システム「S-AWC」。この思想・技術が新世代のSUVにしっかりと反映されていることが、試乗会を通じて理解できました。
圧倒的な走行性能を持つ、ランエボの「S-AWC」。ただ速く走るためだけでなく、安全性や安定したドライブへと応用されているのは、あまりスポーツ走行をしない我々一般のドライバーにとっても、うれしいポイントです。

忘れてはならないのは、この思想・技術は、ランエボの進化なしには生まれなかった、ということ。ランエボはモデル集大成を迎えますが、モータースポーツを通じて鍛え上げられた技術や思いは、今後の三菱SUVにも脈々と受け継がれるでしょう。
ランエボのDNAを持った、三菱SUVラインアップに、これからもどうぞご期待ください。

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