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MITSUBISHI MOTORS

パジェロにして良かった と感じた時 伊藤錬太郎さんと三菱パジェロ(1988年型 25年43万2000km)

※お客様より「ナンバープレートも年月を感じる大切なシンボルなので掲載して欲しい」とのお申し出をいただき、ナンバーを掲載させて頂いております。

自衛官募集

東日本大震災の発生直後、伊藤錬太郎さん(60歳)は惨状を伝えるテレビ画面を正視できなかった。

「一軒ごとに屋号まで憶えているくらい通った地域が津波と地震で被害に遭っている姿を眼にして、
涙が止まりませんでした」

 陸上自衛隊に勤めていた頃、伊藤さんは自衛官募集の任務に就いており、東北地方を担当していた。
震災で大きな被害を受けることになる地域も担当していて、自ら三菱パジェロのハンドルを握って足繁く通っていた。各地の学校や役場を訪ね、紹介者のもとに挨拶に訪れ、自衛官に興味を持ってくれる人材を探し求めるのが仕事だ。

 部署のクルマもあったが、それは他の所員に譲り、伊藤さんは自分のパジェロを持ち込むかたちで毎日の任務を果たしていた。通勤や休日の買い物など、パジェロに乗らない日はないが、この自衛官募集の任務によって多くの走行距離が重ねられてた。

 7年前に自衛隊を定年退職し、現在は警備会社に勤務している。仕事は大手スーパーマーケットの倉庫の警備だ。職場は何度か変わったが、現在は家族とともに暮らす宮城県内の自宅からパジェロで通勤している。2012年8月現在で25年43万2000kmあまり。

 4台も入るガレージに収まっているパジェロは、とてもきれいに見えた。近寄ってみると、ところどころ再塗装されていることがわかる。

「みんな自分で塗ったんですよ。休みが一日だと他のことをしてすぐに終わっちゃうけど、
二日あるとパジェロを洗って、手入れしたりしていますよ」

 洗車だけでなく、伊藤さんはDIY派だ。

「ここから折れちゃったんですよ」

 そう言ってガレージの奥から取り出してきてくれたのは、マフラーとエキゾーストパイプのつなぎ目部分だ。サビとススで真っ黒になっている。本来はつなぎ合わさっていたが、購入から20年を経て、折れてしまった。伊藤さんは、その代わりに細長いパイプを挿入して両者をつなぎ、コーキング剤を塗り盛って修理した。

「うまくつなげたと思っていたんだけど、ユーザー車検の時に係官が下から引っ張って折れちゃったんだよなぁ。だから、二本作った。へへへッ」

 伊藤さんは朗らかで面白い人なのである。

 面白いと言えば、パジェロのリアバンパーの左右に貼られている自作ステッカーだ。

 向かって右側には、「俺にはアウデ●よりも二十五年乗ったパジェロが一番似アウデ●」。ダジャレである。左側には、「三菱自動車ホームページ『三菱愛着力10年10万kmストーリー』取材日8月24日に決定!」。宣伝ありがとうございます。

 他にも、あちこちにExceedやスリーダイヤモンドのエンブレムが貼り付けられ、それでも足りないのか自ら"PAJERO"と印字したテープを貼り付けている。

 伊藤さんのパジェロのグレードはエクシードではないし、スリーダイヤモンドが貼られている場所もオリジナルとは異なっている。

 そんなことは気にしないのである。自らの思うままにパジェロを飾り立て、満足している。
オリジナル至上主義とは正反対に位置しているのが伊藤さんのパジェロの愛しみ方なのである。

何でも早め、早め

 警備の仕事は拘束時間が長い。朝6時45分までに出勤し、18時10分に終了する。
途中、何度か休憩時間もあるが、各自、屋外の駐車場に停めた自分のクルマの中で休まなければならないから、この夏の酷暑の中では大変だった。

「遮熱マットをすべての窓ガラスに立て掛けておいても、車内温度は40度以上に上がっちゃいますからね。冷凍おしぼりを10枚ぐらい作って、休憩時間には額やうなじに当てています」

 後席の窓に取り付けたレースのカーテンも、休憩時間を快適に過ごすためのものだ。
後席ドアが風で開き過ぎないよう、ストッパーも自作して使っている。
他にも、歯間ブラシや綿棒のストックなど、パジェロで休憩時間を有効に過ごすための日用品があちこちに置いてある。

「これなんか、東京の三菱自動車のお客様相談室(現在のお客様相談センター)に電話して、問題ないか確認してもらったうえで作ったんですよ」

 リアシートに置かれていたふたつのハンチング帽には"PAJERO CLUB"という文字と赤いスリーダイヤモンドが刺繍してある。既製品のハンチング帽を手芸店に持ち込み、刺繍してもらった。

「パジェロの名前を使っても構わないかってディーラーに相談したら、メーカーのお客様相談室を教えられ、電話したんですよ」

 結果は、個人で楽しむものなのだから、もちろんOK!

「こっちも、同じ店で刺繍を入れてもらったんですよ」

MA-1タイプのジャンパーの背中には大きくPAJERO CLUBと入っている。刺繍代は、MA-1が6000円とハンチング帽用が各1000円。他にデザイン代として5000円掛かった。

 パジェロの助手席に乗せてもらって、近くの空いた国道をグルッと走ってもらった。雑然とした車内の様子とは対照的に、伊藤さんは背中をピンと伸ばし、両手でハンドルを握って運転している。前方が空いていても、速度はほぼ一定だ。

「いつも変わらず、55キロから60キロの間で運転しているんですよ。家を出るのも4時半だから道路はガラガラですけど、むやみに飛ばしたりはしませんね」

 空いているのだったら、もう少しスピードを上げて通勤時間を短縮しようと誰だって考えそうなものだ。

「飛ばしませんね。それよりも、余裕をもって出発するように努めています。何でも、"早め、早め"と前もって行動するようにしていますからね」

 それは、やはり長年の自衛隊員としての経験によって身に付いたものなのだろうか。

「そうかもしれませんけど、私、最初に配属された普通科(歩兵)の任務がツラくてツラくて、願い出て募集係に転属してもらったんですよ。ハハハハハハッ」

 伊藤さんのような、飾らず正直な人に勧誘されたら、安心して思わず入隊しちゃうかもしれない。

 パジェロは、結婚して男の子ふたりを授かり、義父母とともに六人家族となった1988年に購入した。それまで乗っていた5人乗り4ドアセダンでは全員乗り切らなくなるからだった。

「6人乗れるクルマをいろいろと見て回りましたけど、すぐにパジェロにすることに決めました。角張ったカタチが好きなのと、パリダカールラリーでの活躍に憧れていましたからね。三菱のディーラーを4軒回って見積もりをもらいました。その中で、仙台三菱と宮城三菱が同じ見積もり額だったので、家から近い宮城三菱の佐沼店から買いました」

 前述のように、伊藤さんがパジェロの走行距離をハイペースで延ばすことになったのは、自衛隊員勧誘の任務を自らのパジェロを持ち込んで行ったからだった。
定年退職までの19年間を勧誘任務に携わり、その後半の9年間をパジェロとともに過ごした。

「パジェロを買って良かったなぁと思ったのは、毎年11月に家族みんなで出掛けた温泉旅行やワカサギ釣りなんか。楽しかった」

 伊藤家では田んぼを耕しており、収穫した米の出荷が終わり、ひと段落すると旅行に出掛けていた。一年の収穫と無事を労う旅だ。パジェロにしたので、6人全員でゆったりと乗ることができた。

「スキーに行くわけでもないし、オフロードを走ってキャンプに行ったりするためにパジェロを買ったわけじゃないんだけれど、家族みんなを乗せて運転しながら、"ああ、パジェロにして良かったなぁ"って感じていましたよ」

 遠い眼をしつつ、伊藤さんは昔を振り返った。

 成長した長男はロックバンドを結成し、インディズレーベルからCDも発売し3年間活動したが、現在は埼玉県で住宅販売の営業職に就いている。パジェロのダッシュボードに置いてある赤いパネルに記された"獅子楽"というのはそのバンド名で、伊藤さんはCDを200枚購入し、応援していた。

ゴウヒロミ状態

「通勤距離はたった4.7キロでしたが、そこから仙台まで出掛けると片道80キロありますから、向こうでの移動も含めると、そうした日には200キロぐらい走ることになります」

 伊藤さんはほどなくして所属する事務所長に就任したが、パジェロの持ち込みを止めなかった。事務所のクルマの使用は変わらず部下に譲っていた。

「パジェロが気に入っていたので、"とにかくパジェロで走りたい"って気持ちでしたから」
 伊藤さんのパジェロはディーゼルエンジンの5段MT仕様。

「坂道や峠で、エンジンのネバりが強いんだよね。
トップで走っていてスピードが落ちてそこから加速しても、ノッキングが起こらないんだから」

 燃費は新車時と変わらず、今でも11〜12km/l走るという。

 4500〜5000kmでエンジンオイルを、1万kmでオイルエレメントを交換している。タイミングベルトは8万kmだ。

「一般的には、タイミングベルトは8万から10万kmで交換と言われていますが、私はなにごとも"早め、早め"だから」

 パジェロのコンディションには人一倍気を遣っているつもりだが、4回目の車検を受ける直前にウォーターポンプが壊れ、走行中にボンネットの隙間から盛大に水蒸気を吹き上げて、エンジンが停まった。幸いに、帰宅途中の国道には後続車がおらず、下り勾配の惰性を利用して駐在所の駐車場に逃げ込んで難を逃れた。

 懇意にしている佐沼店の担当者に電話をしてトランスポーターで迎えに来てもらった。車検整備を早めに行い、一緒にポンプを交換。しめて28万円也。

 担当者には今年の春にも世話になった。職場の駐車場に停めておいたパジェロで帰宅しようとしたら、クラッチペダルが踏み込んだまま戻ってこなくなった。クラッチのマスターとサブシリンダーを交換して、3万7000円也。

「そのひと月後には、今度は左後ろのホイールがゴウヒロミ状態になっちゃって……」

 ゴウヒロミ状態???

「"アーチッチ、アーチー"じゃないですか!?」

「ハハハハハハッ。また、ダジャレですね」

「ブレーキキャリパーを交換して9万7000円も払っちゃいましたよ。ハハハハハハッ」
 小さくない出費が連続したのに、伊藤さんはまったく意に介していない。ふつうだったら、それを理由に乗り換えを考え始めたりしても良さそうだ。

「まったくそんな気は起きませんね。むしろ、年々歳を重ねてきて、愛着が増してきています。自分の分身、自分の一部になったようなものだから、他のクルマに乗り換えようという気が起きて来ないんですよ」

 自分流に整備を施したり、ドレスアップを楽しんでいる伊藤さんの言葉には、とても説得力がある。このペースで乗り続ければあと4年で50万kmに達しそうだ。

「こんなに長く乗り続けるとは思ってもいなかったけど、50万キロは乗りたいね」

 その時には、リアバンパーには、どんなダジャレが記されているのだろうか。 

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