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MITSUBISHI MOTORS

写真で一目惚れして、一途に 煖エ誉さんと三菱デボネア(1973年型) 11年2万2000km

※お客様より「ナンバープレートも年月を感じる大切なシンボルなので掲載して欲しい」とのお申し出をいただき、ナンバーを掲載させて頂いております。

独特のカタチをしている

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 待ち合わせ場所の駐車場には、すでに煖エ誉さん(36歳)が愛車の三菱デボネアを停めて待っていた。デボネアの黒いボディは艶めいていて、フロントグリルをはじめとする各部のクロームメッキは光り輝いている。

 駐車場は銀行に隣接しているから、まるでこれから頭取を乗せるために待機しているみたいだ。

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 グレーのポロシャツに濃紺のズボンを履いた煖エさんはピンと姿勢を伸ばして運転席に座っていた。

 挨拶もそこそこに、デボネアの各部分を見せてもらう。塗装は一度も塗り直していないというから驚いてしまう。

「角張って見えますが、直線と平面だけのカタチではないんですよ」

 たしかに、ボディサイドのキャラクターラインはリアドア後端でキックアップしているし、前後フェンダーは細い峰を形成してボディに接合されている。ホイールアーチも円でも四角でもない独特のカタチをしている。こうして改めて眺めてみると、実に個性的な造形が施されているのがわかる。

 車内を覗くと、前後のシートには白いレースのシートカバーが被せられている。ホントに頭取が乗っていそうだ。

「ホームセンターで1500円で買ったんですよ」

「一脚分ですか?」

「全部で1500円です。ハハハハハハッ」

 煖エさんはデボネアをもう一台持っており、それを保管してある車庫へ連れていってもらった。僕が助手席のドアを開けようとしたら、制された。

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「ぜひ、後ろに乗ってみて下さい」

 レースのシートカバーの掛かったリアシートに腰を下ろすと、体重で沈み込むのがわかるくらいに柔らかい。クルマのシートというよりも家具のソファに近い。

「後ろのシートの乗り心地を最優先して造られたクルマですから」

 走り始めると、柔らかなシートと静かな室内が快適だ。とても40年前に造られたクルマとは思えない。現代のクルマのようにドアや窓ガラスが湾曲しておらず、直立に近く"立って"いるので無駄なスペースが生じておらずに外見から想像するほど狭くはない。

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 後ろから煖エさんの運転する姿を眺めていると、まずハンドルが大きいのが目立つ。細いリムと一文字スポークが端的に時代を物語っている。

 煖エさんはコラムシフトの変速レバーに左手の指を絡め、手首のスナップを効かせて上下動させ、変速していく。決してシフトレバーを握らず、添えるだけで滑らかに動かしている。3速プラスオーバードライブのマニュアルトランスミッション。

車庫を借りて、もう一台

 自宅近くの車庫にもう一台のデボネアが収まっていた。こちらは1973年型。煖エさんが最初に購入したデボネアで、今までに11年2万2000km走っている。

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 いま、ここまで乗せてもらってきたのは2台目の1975年型で、2011年に9万1000km走行のものを個人売買で購入してから、4000kmを走った。漆黒のボディが周囲のものすべてを映り込ませてしまうほど曇りがないのは変わらない。ただ、バンパーなどのクロムメッキがホンのわずかにくすんだり、小さなサビが浮いてきてしまっている。少しずつレストアを進めている。

 それにしても、年代物のデボネアを2台持つなんて、何がキッカケなのだろうか?

「自分のクルマはこれしか知りませんから」

 えっ、デボネア2台しか乗ったことがないのですか?

「そうです。デボネアが欲しくて運転免許証を取ったくらいですから」

 青森県で公務員として働き出してから、幸いなことに日常生活での移動は鉄道やバス、自転車、徒歩で済むところに住んでいた。出張が多い仕事でもあるので、仮に自分のクルマを入手しても乗る時間が少ないことはわかっていたから所有に消極的でもあった。

「小学生の頃からクルマは好きでしたよ。オモチャといえばミニカーをたくさん買ってもらっていましたけど、ほとんどが日本車だったんです。ハハハハハハッ」

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 日本車好きは筋金入りじゃないですか!

 職場の先輩が1979年型の日本車のスペシャリティカーに乗っていて、冬季でもトラブルなく、故障して困った話も聞かなかったことから旧いクルマに関心を抱くようになった。長い出張中にその先輩が貸してくれたのが旧車専門の自動車雑誌だった。

「いろいろ旧いクルマが掲載されていましたけど、デボネアが欲しくなってしまったんです」

 なんと、煖エさんはそれまでデボネアの実物を見たことがなかったというのだ。写真に一目惚れしてしまったのだ。

 欲しくなったはいいが、煖エさんは運転免許証を持っていなかったから、忙しい仕事の合間を縫って教習所に通った。同時に、その雑誌に出ていた広告の業者に電話で問い合わせた。一軒目は応対がしっくり来なかったので見送り、二軒目の横浜の業者は在庫がなかった。しかし、二軒目は感じの良い対応だったので、無改造の黒、程度の良いものを時間が掛かっても構わないから探してもらうことを頼んだ。

 すぐに走行6万8000kmの特上ものの個体が見付かったが、持ち主の心変わりでキャンセル。2カ月後に走行11万kmのものが出てきたが、店長の「時間を掛ければ、これ以上のものを見付け出すから」という言葉を信じ、これはこちらからキャンセル。なんとか期限内に取得できそうになった卒業検定の頃になって、ようやく三台目の話が来た。

「(昭和)48年式で"Lテール"ってなんだろう? ホイールは純正ではないけれども純正キャップが付いているから構わないか」

 Lテールとは、この年式のデボネアのテールライトの形状がアルファベットの"L"に見えることから付けられたニックネームだ。

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 購入を決め、横浜から陸送してもらったら途中で運送業者にパワーウインドを壊されてしまった。なにぶん、自分のクルマを持つのは初めてのことだから、行き付けの修理工場などもなく途方に暮れた。北海道の実家のそばに修理工場があることを思い出し、窓が半開きのまま運転して行った。2月の青森と北海道である……。

むつ店に面倒を見てもらっている

 事故にも遭った。手に入れて7年目にスーパーマーケットの駐車場で、前方不注意のクルマが助手席ドアに突っ込んできた。いわゆる"Tボーンクラッシュ"である。その時の画像を拝見すると、ドアが凹み塗装が剥げている。

「相手の小型車の方が損傷が大きかったです。デボネアの頑丈な造りを実感しました」

 その頃には地元の青森三菱自動車販売むつ店の佐藤道博氏とも懇意にさせてもらっていたから、どのように修復したらよいものか相談に乗ってもらった。

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「あの時は、佐藤さんとむつ店の皆さんには我が事のようにご心配をいただきました」

 最終的には、購入した横浜の業者に陸送して復旧してもらった。

「むつ店にはお世話になっていますよ。自分たちが売ったわけでもない旧いデボネアなのに、本当に良く面倒を見てもらっています」

 デボネアは40年前に造られたクルマだから、いろいろとトラブルが発生してくる。最近では、ヘッドライトリレーが壊れてしまった。修理や流用は不可能だ。佐藤氏は販売会社の部品担当に確認したが、在庫はなかった。しかし、そのリレーは全国の他の販売会社には在庫があって、全部で7個散らばって存在していることを佐藤氏が調べてくれた。

「煖エさん、どうします?」

「佐藤さん、お願い、2個買って」

 ふたりで万歳三唱した。

「仕事とはいえ、とにかく優しく接して下さって本当にありがたいです」

 ブレーキホースのコネクター金具も在庫がなかった。デボネア用は他のクルマのものとはキャリパーに取り付ける角度が違っている。「メカニックの方は角度が付くように加工して造ってくれました」

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 長期間の出張が多い部署に配属されていたから走行距離こそ伸びなくても、トラブルはいろいろと出てくる。トラブルとは呼ばないような不具合まで含めても減ることはない。車検でむつ店に預ける期間が2年ごとに少しずつ長くなっていったので、煖エさんは2号車の購入を決意。旧車雑誌の個人売買欄で見付けた75年型を入手した。

「山形在住の所有者は良い方でしたし、書類や陸送手配などについては三菱むつ店に協力していただいたのでスムーズに進みました」

 2台のローテーションのようなものが決まっていて、1号車が4月から12月。スタッドレスタイヤを履いている2号車が12月から3月。

 2号車は原因不明のボディの前傾現象に悩まされていたが、インターネットオークションでフロントサスペンションのコイルスプリングを約2万円で購入し交換。オリジナルではないドアミラーをフェンダーミラーに交換し、残った孔の跡を修復した。

後席に感激

 数年前に部署が異動になったので、以前のように頻繁な長期出張で家を開けることもなくなった。だから、デボネアで休日に友人を誘って温泉に出掛けたりするようになった。

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「友人に運転してもらって、初めて後席に乗ることができたのですが、素晴らしい乗り心地でしたね。感激しましたよ。郊外の道を一定のスピードで走るような場合は重い車体と伸びやかな直列6気筒エンジンのおかげで安定感があります」

 反対に、燃料供給がキャブレターによることと車体の重さが響いて渋滞では一気に燃費が悪化するそうだ。

「2号車はクラッチの調子が完全に戻らずギクシャクするので、誰かを乗せる時に注意が必要ですね」

 マジメで几帳面な煖エさんだが、デボネアの話になるとそこに情熱が加わってくる。淡々としているようだけれども、"軸"にブレがない。

 インタビューを行った喫茶店のマスターにも、「クルマの調子はどう?」と訊ねられたほどこの辺りでは有名な存在になっている。

「時々、修理工場の片隅や山の中の草むらなどで朽ち掛かったようなクルマを目にすることがありますよね? 一歩間違えれば、私のデボネアもああなっていたかもしれないと考えると切ないですよ」

 僕の野暮な質問にも、煖エさんはキッパリと答えてくれた。

「好きになって買ったクルマで、自分の最初のクルマということもあり、思い出や失敗などがたくさんあり過ぎて、買い替えるなんて考えたことがありません」

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 黒いボディなので、できる限りきれいにして乗ること、点火プラグ点検など自分でできることは励行すること、冬季の融雪剤によるサビを回避するために真水でよく洗うこと。それら以外の整備や点検などはむつ店に任せ、愛着を注いでいる。初めてのクルマにずっと添い遂げると誓った煖エさんの一途な想いがデボネアには詰まっているのだ。

「動かせる限り乗り続けますよ。ただし、将来のお嫁さんの許しをもらってですけれどね。ハハハハハハッ」

 帰りに2号車で送ってもらった。試しに助手席に乗せてもらったが、後席とは全然違う掛け心地だった。停車したら、すぐに飛び降りてパッと後ろのドアを開けられる秘書が座るにふさわしいような、固めでフラットなシートだった。やっぱり、特等席は後席なのだ。

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