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MITSUBISHI MOTORS

真っ赤なスポーツカー先生 小畑一弥さんと三菱GTO SR(1996年型 15年9万7000km)

※お客様より了承を頂戴し、ナンバープレートを隠さず掲載させて頂いております。

小学生向け「電気自動車教室」

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 金沢に、真っ赤な三菱GTOに乗り続けている小学校の先生がいるというので、さっそく新幹線に乗って会いに行ってきた。

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 紹介してくれた窪川弘一さんは金沢市の隣の白山市で窪川自動車商会を経営している。お祖父さんが開業し、この辺りで最も古い自動車工場だそうだ。

 工場に着くのとほぼ同時に、コンパクトカーを従えたGTOが滑り込んできた。GTOからは持ち主の小畑一弥さん(49歳)が降りてきて、コンパクトカーからは小畑さんのご家族3人が降りてきた。

 窪川さんは、三菱自動車主催の小学生向け「電気自動車教室」を小畑さんが以前に勤務していた小学校で主催した縁で知り合った。

「ちょうど、小学5年生の社会科で『自動車工業』という単元がありましたから、電気自動車の実物を見ながらプロの方々にお話ししてもらえるというので、お願いしました。電気自動車について、熱心に活動している大人たちを、ぜひ児童に会わせたかったですから」

 それ以降、小畑さんは窪川自動車商会にGTOの車検や整備などを依頼するようになった。

 GTOは、メッキ加工されているホイールが真夏の陽射しに眩しいほど反射している。リヤ部分に貼られている"RS"というシールは本来の"SR"を剥がして前後を入れ替えたという。

 小畑さんは運転免許を取得してから、三菱シグマ、三菱ギャランと乗り継ぎ、初めての中古車としてGTOを買った。

「まさか自分が乗ると思っとらんかった。けど、ずっと気にはなっとったんです」

 子供の頃からクルマが好きで、父親と一緒にショールームを訪れてはカタログを集めていたくらいだ。だから、GTOの存在は良く知っていた。自動車雑誌などでは、あまり評判が良くないことも知っていた。

「"カッコだけのスポーツカー"と酷評されていましたよね」

 1990年代当時としては、GTOは低く幅広いスタイルが大仰に見えるのにもかかわらず、そのパワートレインやエンジン横置きタイプの4輪駆動システムなどをギャランと共用しているところなどが、GTOを認めない人々の論拠だった。

1万円札を204枚

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 GTOのことがグッと身近に感じられるようになったのは、ゲームの『グランツーリスモ』がキッカケだった。

「児童がスゴいゲームだ、スゴいゲームだと話すのを良く聞くようになりまして、そんなにスゴいのならば自分で買って試してみようと思ったんです」

 グランツーリスモは現実に販売されているクルマばかりでゲームが争われ、そのカタチの再現度も非常に高く、小畑さんは大いに感心させられた。

「いろんなクルマが登場しますけれども、GTOが一番カッコ良く、上品に見えました」

 インターネットで中古車の在庫状況をチェックすると、全国に8台の売り物があることがわかった。

 すでに買う気になっていたのだろう、小畑さんはその中古車サイトの画面をプリントアウトしている。そして、その紙を今でも丁寧にクリアファイルに挟み込んで保存してある。石川三菱自動車で売りに出ていた、そのGTOは195万円だった。諸経費込みで204万円。

「ギャランは父親が費用の大半を負担して購入しましたが、GTOは自分で買いたかった。"このクルマはオレが選んで、オレが買うんだ"という思いが強かったので、銀行で204万円下ろしてきて、それを手渡しで支払いました」

 小畑先生は熱い人なのである。息子さんも娘さんも眼を丸くしている。

「そうやって買ったんだなんて知りませんでした。カタログを持っているのは知っていましたけれど、このファイルは初めて見ました」

 無理もない。購入当時、ふたりは5歳と2歳だったのだから。小畑さんはGTOにチャイルドシートを二脚装着して乗り始めた。学校にも毎日乗って通勤しているから、保護者たちからもよく声を掛けられる。

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「せんせ、クルマはカッコいいよね」

 もちろん、児童たちもクルマのことで話し掛けてくる。

「マセた高学年の女子児童なんかは、私のことをカラカうように声を掛けてくれますけれども、"ありがとうね、クルマだけでも褒めてくれてね"って答えていますよ。どのようにでも子供に褒められるのはうれしいですね。ハハハハハハッ」

 今から5、6年前に小畑さんは福井県のタカスサーキットに一人で赴き、サーキットライセンスを取得した。その前に、JAFで講習会を受講して国内B級ライセンスも取っている。

「一度、GTOを全開で走らせてみたかったんですよ」

 コースインする前に座学でサーキット走行の基本を教わった。各自が各々のペースで走るスポーツ走行に参加した。

「コースから飛び出したり、ハーフスピンしたりして、なかなかうまくは走れませんでしたけれども、GTOの本当の実力がわかって、とても面白かった」

 5、6回通って、スポーツ走行を楽しんだ。そのうち何回かは家族も同行して、コースサイドの観客席から走行シーンをビデオ撮影したりした。

 サーキットでのスポーツ走行の話題も、小畑さんは児童たちとのコミュニケーションに活用している。

「せんせ、このクルマで最高速度は何キロまで出したことがあるの?」

「130キロかな」

「ええーっ、そんなに?」

「そう、サーキットでね。サーキットならば、安全だからね」

「そうなんだ。それなら安心だね」

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2回もバウンド

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 毎日の通勤から時にはサーキット走行まで、小畑さんはGTOに馴染んでいった。

「実は、買う前からGTOのことを不憫に思っていたんですよ」

 例の、"遅い、曲がらない"といったGTOに対する悪評である。

「でも、日常的に乗ったり、サーキットを走ったりして、言われるほどじゃないのがわかりました」

 そして、"カタチはスポーツカーだけれども、走りは違う"という批判も当たっていないという。

「当時の三菱自動車のエンジニアは、限られたリソースを活用するためにギャランのパワートレインと4輪駆動システムをGTOにも使ったわけです。世の中にはそうやって造られたクルマは他にたくさんあるわけだから、それはそれでアリではないかと考えるようになりました」

 毎日学校に乗っていくことで、児童たちとのコミュニケーションが増し、GTOはその点でも役にたってくれている。しかし、悲しくなったこともある。購入して4カ月しか経っていない時に、児童が投げたコンクリート片が停めておいたGTOのボンネットに当たり、深い傷を作ってしまったのだ。

「ボンネットの上で2回バウンドしたんです。2回もですよ」

 児童は泣いて謝ってくれ、その子の親も自宅まで謝りに来てくれた。

「"謝ってくれただけでいいんだよ"って笑顔で慰めて、心で泣きました」

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 児童が正直に名乗り出て謝ってくれたことを教師として喜びながらも、大切なGTOが買って間もなく傷付けられてしまったことは、一人のクルマ好きとして悲しみを止めることができなかった。

「学校に毎日停めていたら、そんなことは想定しておかなければならないんですよ」

 小畑さんは自分に言い聞かせるように強調した。

大工事を敢行

 昨年、小畑さんはGTOで事故を起こしてしまった。路地から大通りに出る際に、大通りの手前側の車線をゆっくりと越え、向こう側の車線に入って右に曲がった瞬間に左から走ってきた乗用車と衝突した。乗用車は自走できないほどのダメージを受けた。

「自分に非があることは間違いありません」

 手前側の車線はクルマが渋滞していて、クルマとクルマの間からGTOを出し、左から走って来るクルマがいないかどうか確認したつもりだった。だが、確認できていなかった。

「年齢のせいなのか、注意力が足りなくなっていることを教わりました。ショックでした。後悔しています」

 安全運転に対しては人一倍注意を払ってきたつもりで、自負もあった。

「それでも防げませんでしたから、落ち込みました」

 フレームを修正する必要が生じて、フェンダーも交換した。一緒にボディ全体を再塗装。ちょうど車検の時期だったので、大規模な整備を行った。

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 フロントのプロペラシャフトジョイント、タイミングベルト、2個のエンジンマウント、スパークプラグ、エンジンのガスケットやシール類、ウインドシールドやドアのゴム類などを交換した。サイドブレーキのレバー取り付け部分の加工修理を行い、ディスクブレーキのローターの表面を削って平滑にもした。

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「以前から懸案となっていたところもなるべくやってしまおうということになりました」

 板金と修理に約50万円、車検に約20万円掛かる大工事だった。

「触媒のガスケットや吸排気バルブのシールなども交換させてもらいたかったのですが、見送りました。小畑先生とは年齢も近く、子供の学費がこれから嵩んでいって大変なことはよくわかっていますから、費用対効果の高い順にやらせてもらいます」
と、窪川さんが思い出した。

 小畑さんも、自分でできる手入れは自分で行っている。

 印象に残ったのは、シフトレバーのブーツ。元のブーツの革が破れてきたので外して型紙を取り、同じような革を手芸店から買ってきて型紙通りに切って、ミシンで縫い合わせて作った。キレイな出来栄えだから、誰も自分で作ったとは気付かないだろう。

 駆け足での訪問だったけれども、金沢とその隣の白山市は自然と歴史に恵まれた、いいところだった。帰りに、金沢駅まで小畑さんにGTOで送ってもらった。

「疲れた時、落ち込んだ時なんかの帰り道で、こうやってショーウインドとかビルの大きなガラスの前で停まると、このクルマが映りますよね? "カッコイイな"と思いますもん。そして、"オレはこのクルマを運転しているんだ"という自覚が湧き上がってきて、元気になります」

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 小畑さんは、運転しながら僕にGTOについて語ってくれているのだけれども、それは同時に自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

「私はこのクルマに乗り続けていて、このクルマがスポーツカーだと思っています。低くて幅広くて、3次元的な曲線や曲面の多い、抑揚の強いカタチが好きなんです」

 手を入れていきながら、定年まで乗るつもりだ。

「自分が気に入ったクルマに、自分が乗る。世間体はあまり気にしていません」

 小畑さんに限らず最近の学校の先生はみなさん多忙になっていると聞く。世の中を支える大切な仕事なので、ぜひ頑張って下さいとしか僕には言えないけれども、小畑さんにはGTOというとてもいい相棒がいる。日々の大きな支えになっているし、GTOに夢中になっている小畑さんを見ることが、児童にとって何よりも大きく学ぶことになっているのだと僕は思った。

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