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パーツをはやめに替えて下さい 末典文さんと三菱RVR(1998年型 13年16万6000km)

※お客様より「ナンバープレートも年月を感じる大切なシンボルなので掲載して欲しい」とのお申し出をいただき、ナンバーを掲載させて頂いております。

助手席ですぐに眠る


 助手席に乗せてもらうとすぐにウトウトしてしまう時と、一向に眠くならない時がある。
ドライバーには申し訳ない気もするけど、眠くなるほど穏やかで滑らかなわけだから、それは褒められるべき運転なのだ。
 ヒヤヒヤ、ドキドキする運転じゃおちおち眠くなってもいられない。同乗者が眠くなるような運転を心掛けよう。

「取材で僕の横に乗るスタッフは、だいたいすぐに眠りますよ」

 福岡県でカメラマンをされている末典文さん(60歳)は、さまざまな撮影で九州中を飛び回っている。愛車の三菱RVRに撮影機材とスタッフを乗せ、末さんが運転してどこへでも出掛けている。

 RVRは初めての三菱車で、13年16万6000km乗り続けている。コンパクトカーを4台乗り継ぎ、5台目をいろいろと探している中でRVRに決めた。市内にある各社のショールームを奥さんと訪れ、それぞれ試乗してみた結果、末さんにはRVRのドライビングポジションが特に気に入った。

「RVRが一番しっくり来ました。妻とも、"やっぱりコレがイイよね"って納得して購入しましたから」

実はこの時、RVRの新車価格は予算を少し上回っていた。しかし、いくつものメーカーのショールームを夫婦で回って新車を何台も試乗した結果、ふさわしいのはRVRしかなかった。奥さんだって試乗の実体験に勝るものはないのである。

「"いいわよ"って妻に言われて、心の中でバンザーイって叫びましたよ。ハハハッ」

 まじめそうな口調と表情だった末さんが人懐こそうな笑顔になった。よほどうれしかったのだろう。
 末さんがこれまでに乗ってきたクルマやRVRは大きなクルマではない。カメラマンのクルマというと、たくさんの撮影機材を載せるためにパジェロぐらい大きなものをイメージしてしまう。

「山の中や沢沿いの細い道に入っていって撮影することがあるので、大き過ぎるクルマでは入れません。街中や地方の集落にも撮影に行きますから、クルマは必要最小限の大きさがいい」

 末さんの被写体は、九州中のあらゆるものに及んでいる。四季の自然から始まり、建築物、人物、イベント、静物などを追って九州中を飛び回っている。

「福岡と鹿児島は300km離れていますが、往復は日帰りですよ。300km走っていって撮影し、また300km走って戻ってきます。もちろん、鹿児島の街中ばかりで撮影するわけではありませんからプラスアルファの距離を走って700kmを越えることもありますよ」

 撮影には、3名ないしは4名で出掛けることがほとんどだ。運転はずっと末さん。他人には運転させない。

「運転している方がラクなんですよ。ですから、数日間で1000km以上走るロケになっても、他の人にハンドルは渡しません」

 その道中、撮影に同行するスタッフが助手席に座るとウトウトし始めるのである。
 つまり、末さんは長距離でも穏やかでペースの変わらない運転をする。

「"あなたの運転は安心できる"とか、"ドキッとさせられるようなことがないから安心して横に乗れます"と言われることは多いですね」

 文字で表すと自慢しているように受け取られてしまうけれども、末さんは自慢屋でも偽善者でもない。
 強く意図して、パッセンジャーが眠くなるような穏やかで滑らかな運転を行っているのだ。

「速く走ればいいってもんじゃないんです。私は高速道路でも、100km/hなら100km/h、80km/hなら80km/hの制限速度でずっと走り続けます。他の人はそれが苦痛になるのかもしれませんが、私はフラストレーションにならないんです。疲れないし、運転が苦にならないクルマです。以前に乗っていたクルマは疲れましたけど」

 実際に、福岡中心部の大濠公園と舞鶴公園の周囲を助手席に乗せてもらうと、その通りの滑らかな運転だった。加速して、曲がって、停まるという一連の動作がスムーズにつながっている。それでいて慎重過ぎる運転ではないから、ジレッたくなることもない。安心して身を委ねられるから、これではすぐに眠くなってしまうわけだ。

「ドライビングポジションがしっくり来るんですね。天井とのクリアランス、腹まわりの空間が狭過ぎず広過ぎず、ちょうど良い。シートの高さと角度、ハンドルとの位置関係もいい。だから、長距離が苦にならないんだと思いますよ」

憧れのギャランGTO

 末さんと三菱のクルマの縁は、1960年代後半のギャランGTOにまでさかのぼる。大阪の写真学校に通っていた頃、アルバイト先の社員がギャランGTOに乗っていた。一世を風靡したダックテールのテールゲイト付きスポーツクーペだ。

「向こうの方が年上でしたが仲良くなって、彼のGTOを運転させてくれて、一緒に遊びに行っていました。カッコいいクルマで、憧れましたね」

 携帯電話もインターネットもない時代だったから、どこかに行くのも、誰かに会うにも、リアルに自分が移動しなければならなかった。だから、若者たちは競ってオートバイに、クルマに乗りたがった。携帯電話やインターネットがバーチャルな移動手段なのだとすれば、今も昔も若者はクルマ離れなどしていないのかもしれない。

「あの頃は、よくクルマで遠くまで出掛けていっていましたね。大した目的はなくても、休みの前の晩とかになると、誰かのクルマにみんなで乗って、山や海に走っていっていましたね。富士スピードウェイまで日本グランプリを観に行ったこともありますよ」

 モータースポーツはこの頃から好きになって、ランサーのサファリラリー、パジェロのパリダカールラリーでの活躍などで三菱のクルマへのシンパシーが深まっていった。

「アフリカの過酷なところで戦って優勝するわけですから、三菱のクルマの信頼性は高いのだと思いました。それがフィードバックされた市販車は、丈夫で長持ち、安心できるというイメージですね」

 パジェロに乗ってみたいとは思っていたが、前述の通り、大きなクルマは選べなかった。
 RVRは末さんが抱くイメージ通りに丈夫で長持ちしている。エンジンが掛からなかったことや立ち往生してしまうことはない。
 3年前からピストンリングの摩耗によるエンジンオイルの減りが発生しているが、点検を依頼している九州三菱自動車販売のメカニックとは様子を見ながらやっていきましょうと注意している。

 念のため、4000kmごとにエンジンオイルを交換している。交換5回で約1万円という「オイル交換券」をディーラーで購入し、利用している。

「それ以外は快調ですよ。すべて、工場に任せています」

 半年と一年の定期点検にも必ず出している。もちろん、代金が割安となるハーティプラスメンテナンスも検討している。
 点検と整備に関する末さんの考え方が独特だ。

「サービスの方にクルマを渡す時には、"パーツは早め早めに交換しておいて下さい"と必ず伝えています。昔と違って、もう自分で自分のクルマを手入れしたりできないし、してもいないから、その分キチンとやってもらいたいんです」

 これまでこの連載で会っていただいた方々のように、必要なパーツだけ見極めて交換したりするのではなく、早めにドンドン替えちゃってくれというわけなのである。

 見極めて節約するのではなく、早めの交換でトラブルのリスクを少しでも減らそうとしている。

「仕事で他人を乗せて走ることが多いので、安全で絶対確実に目的地に着くことが大前提ですから」

 担当営業、現在は3人目。

「ウオッシャー液すら自分で注ぎ足したりしなくていいほど、良い点検整備をしてくれているので、もう自分で触らないほうがいい。全部お任せにしています。」


 潔い。

謎のガス欠

 RVRのボディには、サビこそ見当たらないものの細かな傷がたくさん目に付く。細い山道を走った時に両側の草や木の枝などが擦れて付いたものだ。

 運転席のドアヒンジのストッパーが一本、ボディを裂いて抜けたままになっている。開けていたドアに強風が吹き込んだ瞬間にブチ切れた。大きく開けなければ支障はないのでそのままにしてあるが、こういうこともあるのだ。

 エンジンオイル消費量が増えているにもかかわらず、燃費は変わらない。街中で7〜8km/L、高速道路で10km/L。

「無給油で鹿児島往復できますが、一度だけガス欠を起こしたことがあるんですよ」

 あと1kmで高速道路を降りるというところでボソボソッといって、エンジンが停まった。

「何度も同じルートを同じパターンで走ったことがあるので驚きました」

 燃料計の"E"の文字の上に針がまだ重なり切らないところだったので、余計に謎だった。JAFのロードサービスに牽引してもらい落着したが、その後は起きていない。

「4速ですが、ATと4WDの組み合わせも気に入っています。山道でも状況に応じてギアをホールドしたり、下り坂でシフトダウンしたり賢い。マニュアルシフトできますが、使ったことがない」

 未舗装の山道を上がったり下りたりするような走り方では4輪駆動が役立っている。

「福岡を一望できる米ノ山にあるハンググライダーのスタート台までの細い急坂でも不自由しませんよ」

 末さんがRVRを長く乗り続けているのは、"用途に合っている"からという至極当たり前の理由しか並ばない。しかし、ひとつひとつの理由がとてもハッキリとしているところが原動力となっている。

「何歳まで仕事をするかということにもよりますが、まだ替えませんよ。ハハハハハハッ。替える時は、最後のクルマということになるんでしょうかねぇ」

 もし、あした替えなければならなくなったとしたら、何を選びますか?

「デリカD:5に一度乗ってみたいかな。意外と幅は広くないし、ああいうカクい形が好きなんですよ」"カクい"というのが博多弁なのかどうか知らないけれども、九州中を走り回る末さんとデリカD:5というのもまた、勲章だらけのRVRのようにサマになるに違いない。

「ちゃんと乗れればいいんですよ」

 ちゃんとしているのが末さんです。

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