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2019.05.31

東京都

家族の一員のような存在

小嶋聡さんと
三菱360ピックアップ(1969年型)

026YEARS

013,000KM

※お客様より了承を頂戴し、ナンバープレートを隠さず掲載させて頂いております。

写真館のピックアップトラック

eKワゴンとeKクロスのフルモデルチェンジにちなんで、三菱自動車初の軽自動車である「三菱360バン」を乗り続けている男性を埼玉県に訪れたのが前回のこと。
現在ではとても珍しい三菱360バンを取材できただけでも幸運だったというのに、なんと、幸運というものは続くものらしく、今度は「三菱360ピックアップ」までも取材できた。

三菱360ピックアップは、その名の通り、360バンのボディに代わって、屋根のないピックアップトラックのボディが架装された、同時期に並行して生産されていた商用の軽自動車だ。
排気量360ccの空冷2ストローク2気筒エンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するというメカニズムも、後ろヒンジで前が開くドアを持つボディ形式も共通している。

前回に取材したバンは1968年型だったが、今回のピックアップは1969年型と製造年も近い。

ほぼ50年近くも前の軽自動車が、今でも走り続けているのだ。

ピックアップの持ち主は、小嶋聡さん(47歳)。1993年に購入したから、もう26年間も乗り続けている。

小嶋さんは東京都町田市でイタリアンレストラン「トラットリア・ マリー」を経営している。この場所でもう14年間も営業を続けている人気店で、店内の中央には「三菱500」が展示されていてる。マリーというのは、祖父が創業し、2005年まで営業していた「マリー写真館」から引き継いだものだ。

三菱500を100台無償貸与

小嶋さんは、三菱360ピックアップや三菱500などについて僕が“1を訊ねると、即座に答えが10返ってくる”ほど三菱のクルマに愛情が濃い人だ。

しかし、最初から三菱のクルマだけを好んできたわけではない。運転免許を取って最初のクルマは他メーカーのものだったし、輸入車にも乗っている。では、なぜ三菱360ピックアップであり、三菱500なのか?

「父が500から始め、ずっと三菱のクルマに乗り続けていたのを良く憶えていて、親しみがあったからです」

父の一也さん(90歳)のエピソードがとても興味深い。1961年当時、カメラやフィルムで有名な小西六写真工業に勤務していた一也さんは、あるキッカケから三菱500に乗ることになった。一也さんが当時の資料を前にして思い出して下さった。

「会社が三菱500を100台購入して、顧客向けの活動として『さくらフィルムファミリードライブ』という企画を始めたんです」

小西六のカメラのユーザーに三菱500をレジャー用に無償で最大2日間貸与するというものだった。借りた人は、旅先でさくらフィルムとカメラを使った写真を撮影し、三菱500が写ったプリントを提出する。

まだ日本に本格的なモータリゼーションが到来する寸前のことだったので、この企画は大反響を巻き起こした。申込者が多数だったために抽選が行われ、その倍率は優に100倍を超えた。1年間の活動が終了し、三菱500は社内の希望者に抽選で払い下げられることになった。

100台は全車が黄色と赤のコニカカラーに塗られていて、そのままで乗り続けるのなら9万円、塗り直すのなら10万円という価格だった。こちらも希望者が殺到したが、一也さんは運良く当選した。

「会社の有志が集まってドライブクラブを作ったら、同じように当選した人の三菱500ばかりになちゃってね。ハハハハハハッ」

慣れた頃にはもう次のクルマが

三菱500を大いに気に入った一也さんは、一年後にコルト600を自分で購入した。それをコルト1000に乗り換え、次は1000F、1100Fと換えていった。

「ちょうど私が運転に慣れた頃になると、次のクルマを買って来ちゃって困りましたわ」

母の園子さん(81歳)も微笑みながら当時を懐かしがる。その後も、ギャランにシグマ、デリカなど 主だった三菱車に乗り続けて来た。今でも、500や360ピックアップを運転している。

そんな姿を息子の聡さんが傍で見ていたので、三菱360ピックアップに乗り始めたのも自然なことだった。ときどき通る道路の傍の月極め駐車場に駐められていた360ピックアップを譲り受け、現在まで26年1万3000km乗り続けている。

ナンバーを取得し、快調に走るようにするためには手間と時間を掛けた。その甲斐あってか、状態は良く、2ストロークエンジンの回転も軽快に、とても快調に走る。助手席に乗せてもらって走ったが、その様子ははっきりと伝わってきた。

インテリアのデザインは360バンと共通している。しかし、360ピックアップは2座席なので、空間感覚が異なってよりタイトに感じる。タイトだから、前方開きドアのありがたみを強く感じた。なんとなく、現場に着いたら、すぐに仕事に取り掛かれるような気がしてくる。

現代の軽自動車と較べるととても小さな車体だけれども、意外なほどに荷台が広く、そして深さもあるので、たくさんの荷物が運べそうだ。

あらゆる分野でお役に立つ

聡さんは他にも古いクルマを何台か持っているが、この360ピックアップとともにある時間が最も長いものになった。

「2ストロークエンジンやコラムシフト、三角窓など、このクルマには今のクルマにはないものがいくつも備わっています。手に入れた26年前でさえ、古いクルマでした。でも、いま見ると価値が大きく見えますね」

自分でクルマを運転するようになり、古いクルマを再生し、維持していくようになったのは360ピックアップがキッカケだった。

聡さんは乗ったり、修復したりするだけでなく、クルマにまつわる家族の歴史の聞き書きを行なっている。前述のさくらフィルムファミリードライブについても、一也さんのかつての同僚に話しを聞いたりしている。

「歴史をたどることの面白さに気付かされました」

その過程で資料やグッズ、ミニカーなどもどんどんと増えていった。それらを見せてもらうと次から次へと貴重なものが出てくる。

カタログやパンフレットなどを見せてもらうと、開発陣の真摯な想いが表現されているようで思わず見入ってしまった。

「あらゆる分野でお役に立つ三菱の自動車」

クルマだけでなく、スクーターやトラック、バス などまでも製造していて、それを紹介する総合パンフレットの冒頭に掲げられたキャッチコピーだ。360ピックアップもバンもそこに掲載され、また、聡さんは商用軽自動車だけの当時のカタログも持っている。

「我が家にとってはただのクルマではなく、もう家族の一員のような存在です」

半世紀近く前の三菱の軽自動車の元祖的な2台は、熱心な愛好家たちによって現代でもこうしてグッドコンディションを維持されているのだった。

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