※お客様より「ナンバープレートも年月を感じる大切なシンボルなので掲載して欲しい」とのお申し出をいただき、ナンバーを掲載させて頂いております。

三菱eKワゴンがフルモデルチェンジして、テレビでも盛んにコマーシャルを流している。青森県在住の田沢勝さん(35歳)は初代eKワゴンに11年16万7000km乗っている。

「新しいeKワゴンも良さそうなのですが、車高が高いので、ウチの車庫に入らないんですよ」
自宅の屋根の角度にうまく合わせるかたちで車庫を田沢さんのお父さんが建てたのは、今から30年以上も前のことだった。お父さんはいわゆるスペシャリティカー(懐かしい響き!)に乗っていたので、建てた時には天井の高さはとても余裕があった。しかし、幾星霜。クルマの全高がこんなに高くなろうとは誰も予想すらしていなかった。
「eKワゴンは、使いやすいところが気に入っています」
車庫に停められているので、塗装がツヤツヤしている。
「最近は細かいところにサビも浮いてきているので、見付けたら落とすようにしているんですけどね」

田沢さんは、ドアポケットのプラスチック製の間仕切りを外して、フロントガラスにあてがってコスるゼスチュアをした。
「こうやって使うんですよ」
霜とりクンだ。
「この辺じゃ、冬の朝はガラスが凍ってしまうので、氷をこれで掻き落とすことから始まるんですよ。これを考えた人は北国出身の人じゃないですかね?」

スクレイパーは自動車用品店などで売られているものだが、eKワゴンは標準装備していたのだ。それも、使わない時に邪魔にならないように、ドアポケットの間仕切りにもなっている。
霜とりクンは半透明のブルーのプラスチックでできていて、それと同じ色の素材でドアにカップホルダーも設けられていた。
半透明のプラスチックはダッシュボード中央下の小物入れにも用いられている。コストカットの対象にされてしまいそうだが、実用的なアクセサリーになっていながらインテリアの彩りになっている。他にも、ドアポケットの車検証入れやグローブボックス下の“隠しスペース”などの装備は、よく考えられている。
「このクルマは、こういった細かいところもユーザーの立場に立って考えられているんですよ」
その通りで、ユーザーがeKワゴンをどう使うかということを丹念にシミュレートしないと、こういう装備品は考え付かないだろう。田沢さんもほとんど同じ色のアロマディフューザーを自動車用品店で買ってきてコーディネイトして楽しんでいる。

自室に案内されて話をうかがった。たくさんの本やマンガ、CDやDVDなどがきれいに整理整頓されている。
「eKワゴンのことは、この雑誌で知りました」
eKワゴンを特集した自動車雑誌だ。弟さんを電気工事士の資格試験会場に送り届け、帰りを待つ間に近くのコンビニで見掛けて購入した。
「弟を待つ間に読む本を持ってくるのをうっかり忘れてしまって」
その頃、田沢さんは六代目の三菱ミニカに乗っていたので、すぐにはeKワゴンを買おうという気にはならなかった。その後、ミニカをお父さんが乗ることになり、何か一台軽自動車を購入する必要が生じた。
調べてみると、背の高いワゴンタイプが増えていた。車庫に入るもの4台を比較した結果、eKワゴンに決まった。
「ミニカと同じエンジンというのが、まず安心しました。よく回って力があるのは体験していましたからね」
デザインも好きだった。
「特に後ろから見たところが美しくてね」
後席の広さと乗り降りのしやすさも大事なポイントだった。

「ウチの母親は助手席じゃなくて、後席に乗りたがるんですよ」
それまでにミニカや家族のクルマを買って付き合いのあった中古車販売店からM 4WDグレードを118万円で購入した。
「この辺りでは四駆でないと冬はキビしいですからね」
4輪駆動ではない軽自動車に冬に乗っている人を知らないという。
田沢さんは自分の撮った写真をパソコンできちんと整理していて、eKワゴンで出掛けた先の景色などをたくさん見せてもらった。ガイドブックのように、青森や近隣の秋田や岩手などの風光明媚なところや名所旧跡などが網羅されている。

中でも、横浜町の「菜の花フェスティバル」には何度も出掛けている。
「いま付き合っている彼女と初めてのデイトでここに行ったんですよ」
黄色い菜の花が一面に咲いている。中には、人の背丈ぐらいまで伸びた菜の花畑を使った“菜の花大迷路”なるものもある。さぞや楽しいデイトだったのではないだろうか。
勤めていた会社の同僚と白神林道を岩崎村から西目屋村まで走ったのもeKワゴンだった。
「私のeKワゴンは3速ATなのですが、カーブと上り下りの多いこの林道を走っても、よく走りました。友人の4速ATの軽自動車で走った時のことを思い出しても遜色ありませんでした。ただ、急な上り坂では力不足は否めません。そこぐらいですか、不満点は」
温泉も好きで、碇ケ関、嶽、浅虫、酸ケ湯などに出掛けた。地名を聞いただけで行ってみたくなってしまう。
青森は美味しいものにも恵まれているから、田沢さんもいろいろと食べに出掛けている。東通村のホタテ海鮮丼、五戸の馬刺し、五所川原のやってまれ丼、大間のマグロ丼や青森シャモロック……。
もう、キリがない。お腹が鳴ってくる。太宰治の生家「斜陽館」に弘前城、ねぶたの家「ワ・ラッセ」、寺山修司記念館。訪ねてみたいところもたくさんある。青森はいいところだ。
「カーナビとETCは後から付けましたが、ETCはあまり使っていません。青森県内では高速道路が十分に整備されていないし、乗らなくてもあまり困らないからです。ハハハハハハッ」
たしかに、市街地を除けば道路はとても空いていて走りやすいから、高速道路にも乗らなくなるだろう。

田沢さんの話をうかがっていると、弟さんの資格試験に始まって、誰かをクルマで送ったり迎えに行くことが多い。
「バスは本数が少ない上に、夜は走っていませんから。それに、私は酒を飲みませんから、いつでも運転できるんですよ」
たしかにそうかもしれないけれども、忘年会や新年会、歓迎会に送別会。二次会のカラオケ店に2往復したこともある。人が良くて、親切で、優しい人なのだ。
eKワゴンは出先で止まってしまうようなトラブルは起こしたことはないが、サスペンションを折るという珍しい経験をした。
「同僚の見舞いに行くのに手土産を買いに菓子屋に寄った時に、クルマから降りたらポキッと音がして右斜め前に傾いたんです。本当ですよ。ハハハッ」
右前輪のコイルスプリングが折れていた。
「三菱に持ち込んで修理してもらったんですけれども、代車に貸してくれたデリカは背が高いから断って、弟にミニカで迎えに来てもらいました」
ショックアブソーバーに穴が開いたこともある。

「カーブを曲がるたびに、カタカタッていう音がしていました」
ちょうど車検の時期だったので、工賃なしで交換してもらった。車検は購入した中古車販売店で行い、6カ月と12カ月点検は青森三菱自動車販売弘前店で行っている。
「三菱自動車の弘前店さんは予約をしておくと早く仕上げてくれるし、代車も貸してもらえるので助かります」
燃料計の針が満タンにもかかわらず急に下がる症状はなかなか原因がわからなかったが、弘前店での修理で完治した。
「気を付けているのは、エンジンオイルとATFに三菱純正のものを使うこと。それに、冬は融雪剤をマメによく洗い流すということですか」
田沢さんは、目下、就職活動中だ。面接が進んでいる会社があるというから、そこに決まれば以前のようにeKワゴンで通勤することになる。仕事に馴染んだら、菜の花フェスティバルに一緒に行った彼女と一緒に暮らしたいと考えている。
山の麓のリンゴ畑が続く一帯をeKワゴンで走った。

「スプリングが折れたりしたこともありましたけど、別にそれで困ったわけじゃありません。むしろ、このクルマに乗っていて良かったなあと感じることが多いですよ」
夏の陽射しを浴びて、リンゴの樹は緑の葉をいっぱいに広げている。
「“車庫に入らないから”というのは方便みたいなもので、やっぱり私の暮らしと使い方に合っているから乗り続けているのだと思います。まだまだ乗り続けますよ」
のどかで自然豊かなところでの田沢さんの暮らしにeKワゴンはとてもよく合っていた。それは暮らしぶりが変わっても変わらないだろう。

編集部追記:
田沢様から「eKワゴンを買い替えた」と、お写真が届きました。同じ型式のeKワゴンで、ナンバーも同じ“77-04”です!
買い替えられたのは2月ですが、雪融けを待って撮影されたとのことです。(2015年4月)
