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クルマに限らず、大きな買い物をする時にはじっくりと調べてから買うこともあれば、そうでないこともある。
三重県在住の山内俊英さん(54歳)が7年14万4000km乗っている三菱デリカD:5を買った時は、まだディーラーにカタログすら置かれていなかった。
正式発表の前だったので、読んでいた自動車雑誌の新車予想記事の中に書かれていたデリカD:5に関する小さな記事を見て、近くの三菱自動車のショールームに赴いた。
「“デリカD:5って、どんなクルマなんですか?”って訊いたら、これをくれたんですよ」


デリカD:5の“D”を模したカラー印刷の立派なパンフレットだ。
発表前のため仕様等は変更する場合があります、と書かれてある。
先代にあたるデリカ スペースギアから一転して角張ったスタイルが気に入ったのと、三菱のクルマだったら間違いないだろうと安心して山内さんはすぐに発注した。1月31日に発表され、山内さんのは2月10日にはもうディーラーに来ていた。
自動車保険を切り替えるのに、保険屋に言われた。
「デリカD:5? そんなクルマあらへんわ」

早過ぎて、クルマを特定するコードがまだ設定されていなかったのだ。
「製造番号が2400番台までがデモカー用に造られたもので、私のは3200番台だから相当に早い時期に造られたものでしょうって言われました」
実車も見ず、カタログすらでき上がっていない段階で山内さんがデリカD:5を発注したのには理由があった。
それまで11年間乗っていたミニバンが深刻なトラブルを発生していたからだ。ディーゼルエンジンを搭載するそのクルマの燃料噴射ポンプから燃料の軽油の漏れが止まらなくなってしまったのだ。
「最後の頃なんて、漏れた軽油を溜めておくように、エンジンルーム内に500ccのペットボトルをくくり付けておいたのですが、一日でそれが一杯になっていましたからね」
燃料噴射ポンプのパッキンがダメになったのが原因だったが、そこは重要保安部品のためにアッセンブリー交換しなければならなかった。修理見積もり額は30万円。
「11年乗ったクルマに30万円も出す気になれなくてね。だから買い換えることにして、早急に次を見付ける必要に迫られたのですよ」
ただ、そうは言っても山内さんは仕方なくデリカD:5を購入したのではない。
「カクカクしたかたちは好きだったし、三菱のクルマだったら間違いないだろうと、そこは信頼していましたから躊躇しないで注文しましたよ」
出たばかりのクルマを買ったことを知り合いによく問い質された。
「よう買うたな」
「三菱のクルマだったら、ええやろ」
オプション装備を頼む必要がないほど、最初からいろいろ付いていた点にも背中を押された。
山内さんが三菱のクルマに信頼感を寄せているのは、噴射ポンプがダメになったミニバンの前にギャランMX-4に9年間乗っていたことも大きく影響している。
「いいクルマでしたね。細かなところがよく考えられて造られていて、それをカタログに謳っていないところにも感心しました」
例えば、ドアノブ。レバータイプではなく、バータイプを採用しているのは、万が一、クルマが転倒して裏返ってしまってもドアを開けやすいように力強く握れるバータイプにしている。
「サイドドアビームの採用も早かったし、全体的にマジメに造ってありました」
ギャランMX-4を買った経緯もちょっと変わっている。
それまで山内さんが三世代に渡って乗り続けていたセダンが前輪駆動(FF)化された。
「当時の未熟なFFですから、過大なアンダーステアから逃れられなくて、どうしてもそれが受け入れられませんでした。FR(後輪駆動)でいいクルマはないかと探していました」

そうした時に、勤めている機械メーカーがドイツ製の高圧洗浄機のOEM製造を始めることになり、その宣伝として鈴鹿サーキットで行われるダートトライアル競技会の冠スポンサーを務めることになった。
各車2回行われるタイムアタック走行の一回目と二回目の間に、泥だらけになったマシンをその高圧洗浄機で瞬時にピカピカに洗い上げるというデモンストレーションが選手たちにウケた。ウマいところに目を付けたものだし、ユーモアがあるではないか。
そのデモンストレーションの手伝いに出掛けた山内さんは、タイムアタック走行の前の、いわゆる前走車の助手席に乗せてもらえるという幸運に恵まれた。クルマはギャランVR-4。
「時速140キロから150キロも出して、コースを横になって走ってくれて、スゴかった。そうか、FRじゃなくて四駆という手があったかっ!」
ギャランについて、この時はいろいろ調べてみた。VR-4はハイオクガソリン指定で、実際の燃費も7km/L前後らしい。でも、MX-4ならばレギュラーで9km/L走るらしい。「毎日往復50kmの通勤なので、ハイオクでその燃費はキツかったですね」
そのようにして、同じギャランの4輪駆動でもMX-4を購入した。
ギャランMX-4からミニバンに買い換えたのは、山内さんのライフスタイルに変化が生じたからだった。
ランニングを再び始めて、マラソン大会に出場するようになったのだ。クラブに所属し、大会に出場する際には“クルマ係”の山内さんがみんなを乗せていくようになった。ひとりで運転して、鳥取の大会に出たこともある。
「6人乗った時の、6人分のバッグを収めるスペースに余裕があるともっといいんですけどね。ハハハハハハッ」
今では、年間にハーフマラソンを8本から10本、フルマラソンを1本のペースで走っている。
「フル(マラソン)はエラいですからね」
やはり、30kmを越える辺りから身体的にも精神的にも過酷になってくるそうだ。
一度、フルマラソンを走ってから、ミニバンを運転して帰ろうとしたら、高速道路のサービスエリアでクルマから降りられなくなったことがある。脚に疲労物質が溜まったままクルマを運転すると、降りる時に脚が動かなくなってしまうのだ。だから、今ではフルマラソンに出場する時には電車で行くことにしている。
また、ご家族は母、妻、三人の娘の6人家族だから、全員で出掛ける時にはデリカD:5の出番となる。毎年夏には必ず旅行に行っていて、ここ数年の行き先は伊豆箱根、淡路島、安曇野など。

どこも長距離運転になるが、全行程を山内さんが運転している。上の娘ふたりはペーパードライバーで、奥さんは自分の軽自動車しか運転したがらない。お母さんは、マニュアルトランスミッションしか運転しないからだ。
「せめてふたりの娘のどっちかには運転してもらいたいんですけどね。ハハハッ」
また、友人6、7人と毎年四国へ讃岐うどんを食べに行っている。片道500km弱の行程で、4、5軒をハシゴする。

「期待以上にいいクルマですね」
山内さんはデリカD:5にとても満足している。トラブルはほとんどないが、2、3ヶ月前にシートベルトが壊れたことがあった。ロックが効かなくなったのだ。修理では解決せず、交換した。
「新車の頃と較べて、最近は、ハンドルの付け根や足回りから雑音が目立つようになりました」
走り出してしばらくすると、クルマの下の方から鉄板が鳴るパコンッという音がする。カップ焼きそばのお湯を台所のシンクに捨てた時の、あの音だ。
「機械やから、なんかしら音はするでしょう。あんまり気にしていませんよ。それよりも、シートベルトが壊れたのには驚きました。あんなところ壊れるんかいと若干、疑問に思いましたけどね」

装着するタイヤによってロードノイズがずいぶんと違ってくることも長く乗り続けているうちにわかった。
「いちばん静かなのは、最初に履いていたタイヤ。さすがに純正だけあって静かだった。でも、タイヤショップでは売っていなくて、三菱のディーラーでしか買えないところがネックですね」
次に履き替えた日本ブランドのオールシーズンタイヤが酷かった。高速道路で同乗者と会話できないほどうるさかった。懲りて、タイヤショップに相談して勧めてもらったのが、いま履いているミシュランのオールシーズン。
「ミシュランは静かでいいですね」
30年間同じ会社に勤めていて、通勤路も30年間変わっていない。ガソリンスタンドの領収書に走行距離をメモし、数カ月分溜まったところでパソコンに打ち込み、燃費の増減をグラフにしてプリントアウトしている。
「これで通勤費がいくら掛かっているのかわかりますから。季節ごとに燃費の増減があるのが一目瞭然ですね。面白いのは、四駆で走った方が燃費がいいんですね」


累計で、四輪駆動で9.7km/L。二輪駆動では9.0から9.1km/Lだ。山内さんは空になるギリギリまで走るタイプなので燃費の変化には敏感だ。

「三菱のシルバーが好きなんです。他のクルマのシルバー塗装と違って、透明感があるでしょう?」
たしかに違う。自宅の前の田んぼの横に停めたデリカD:5を眺めながら、山内さんは微笑んだ。山内さんは会社に勤めながら、家族で米と野菜を作っている。だから、長女と次女にはオートマ限定ではない通常の運転免許を取らせた。軽トラックを運転するために必要だからだ。
「農業というのは、ひとりではできませんから。忙しい時には家族総出です」
モヤシやキノコなど畑では作れないもの以外の野菜はだいたい自給しているというから羨ましい。家族で作った米や野菜は、さぞや美味しいのだろう。
