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MITSUBISHI MOTORS

番外編 私にとって運命のクルマです 千葉富明さんと三菱アウトランダーPHEV(2013年型 0年1200km)

※お客様より了承を頂戴し、ナンバープレートを隠さず掲載させて頂いております。

じんわりスロットルワーク

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 岩手の千葉富明(63歳)さんを再訪した。

 2011年3月4日に取材させていただいた16年71万3000km走った三菱パジェロ2800をとうとう廃車し、それと入れ替わりに三菱アウトランダーPHEVを注文されたことを、ご丁寧にもメールで報せてくれたのだ。

 3月4日といえば、東日本大震災のちょうど一週間前。11日の震災時には宮城県志津川町の海沿いに建つホテルの温泉の脱衣場で被災した千葉さんは、パジェロをホテルに残し大変な思いをして数日後に100km歩いて岩手の自宅まで帰ってきた。

 千葉さんが勤めている岩手の農場のある辺りは、この夏から秋に掛けて二度の集中豪雨に見舞われたばかりだから僕もちょっと心配していたので顔を見に出掛けてきた。

 新幹線の駅を降りると、2年前と同じように千葉さんは迎えに来てくれていた。でも、クルマが違う。2年前とは反対側の駐車場に停められたアウトランダーPHEVはピカピカで、サビだらけだったパジェロとは大違いだ。

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ボディはピカピカでも、フェンダーのホイールハウスに枯れ草が付着しているところに農場勤めの千葉さんらしさが表れている。

 乗せてもらうと、微かに新車の香りがする。走行距離は、まだたったの1200km。71万kmと較べたら、走っていないようなものだ。

「ガソリンなんて、28リッターしか使っていないんですから省燃費ですよね。このクルマ、お利口さんなんですよ」

 オリコウサン、ですか?

「ここにスパナのマークが出て、“1000km点検を受けて下さい”っていうんですよ」

 千葉さんが指差すメーターパネルのマルチインフォメーションディスプレイに点検を促す指示が出たそうだ。

「ワイパーだって、雨が降り出したらいきなり動き出したのにはビックリしたねぇ。ヘッドライトだって、(スイッチを)一番向こうじゃなくって、手前のところで止めておくと自動で灯いたり消えたりするんだもんねぇ」

 パジェロを16年乗り続ける間にクルマはずい分と進化した。千葉さんが浦島太郎のように感じるのも無理はないのだろう。

 シフトレバーのすぐ後ろにある“SAVE”と記されたバッテリーセーブモードスイッチを押して走り出した。このスイッチをONにすると、アウトランダーPHEVは駆動用バッテリーに蓄えられた電気をキープして、極力、エンジンで発電しながら走る。電気の残量は8割ほど。

「まだ、どんな時にどんな走り方をするのか全部をつかみ切れていないけど、なるべく電気を貯めて走るようにしていますよ」

 パジェロ2台、その前のジープやギャランΣなどもディーゼルエンジン搭載車を乗り継いで来た千葉さんのスロットルワークは穏やかで、じんわりと踏み込んでいっている。

「セーブモードにしなくても、あまりエンジンは掛かりませんね」

 自宅から農場までの約30kmの行程でも、一度もエンジンは掛からないという。

「朝、家を満充電で出て、山の中の農場に着くと3分の2使ってる。逆に帰りは下りだから、農場で満充電にしておいて家に着くと3分の1を使っている」

 家の電源は200ボルトで、満充電には4時間。100ボルトだと13時間掛かる。

 200ボルトで充電した方が、断然早い。

ツブれ掛かったマッチ箱

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 「カネコさんに取材してもらったあのパジェロね、73万キロで泣く泣く諦めることにしたんですよ」

 廃車する際に、メーターユニットを形見に取り外した。距離計の数字は、72万8954km。

 2012年10月のある日、パジェロで帰宅したらガソリンタンクがボディから外れ掛かっていた。すぐにディーラーである東日本三菱自動車販売みずさわ店に持ち込み調べたところ、ステーが錆び切れてタンクを支え切れなくなっていた。

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 それだけならば修理をして乗り続けるところだったが、事態は深刻だった。リフトで持ち上げて下回りを見たら、タンクの上側を通って普段は見えない横方向のフレームが錆びて、縦方向の左右のフレームを結合できていなかった。

「ディーラーの人たちと一緒に驚きました」

 今まで車検や法定点検の時には錆びた部分は溶接して補強してもらったりしていた。しかし、それも追い付かずに一気に錆が拡がったようだ。

 サスペンションやドライブシャフトなどが取り付けられている重要な部分は、かろうじて残っていた。

「ツブれ掛かったマッチ箱のように、ボディが歪んでいましたよ」

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 きっと、走っているうちに少しずつ歪みが進んでいったのだろう。極限まで到達したわけだ。天寿を全うしたと言っていい。

「原因はわかっているんですよ。農場の入り口でクルマの下回りを消毒しているでしょう。ガンで吹き付ける消毒液に使う薬品は酸性だから錆びてしまうんです」

 でも、73万kmだ。以前にお邪魔した時に見せてもらった三菱デリカトラックは49万km余りを走っていたから、一概に薬品のせいだけというわけでもないだろう。いずれにしても、千葉さんはどんなクルマでも徹底的に乗り尽くす人だということに変わりはない。

 懇意にしているディーラーのスタッフたちと協議の上、廃車することを決めた後、千葉さんは地元の駒形神社で拝んでもらった。これまで走ってくれたパジェロに感謝するためだ。

「神主さんにホメられました。“クルマを買って無事故を祈願してくれという人は多いけれど、あなたのように廃車してから拝んでくれという人は初めてです。本当は、その方が望ましいんですよ”って。ハハハハハハッ」

 たしかに、神仏に頼みごとばかりではムシが良過ぎる。

 パジェロが50万kmを迎えた時も、千葉さんはディーラーのスタッフや遠く愛知県岡崎市からパジェロの開発担当者たちを招待して「感謝の宴」を行ったことは前回の記事に書いた。被災した時のホテルにも、一段落してから報告とお礼に訪れている。感謝するだけではなく、具体的な行動に移して身体で表現するのが千葉さんの礼の尽くし方、流儀なのだ。誰にでもできそうだけれども、簡単にできることではないと思う。

※写真は一部2011年3月取材時の物を使用しています。2011年3月取材時の記事へ

100km歩いて帰れますか?

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  東日本大震災の時に、被災地から100km歩いて岩手に戻ってきたことは直後のメールのやり取りで教えてもらい、前回の記事に書いた。その事実は強烈で、僕にとってずっと忘れられなかった。

 あの震災が被災者の方々と被災地に甚大な被害をもたらし、深い悲しみに包まれたことは承知している。しかし、その一方で千葉さんのように切り抜けられた人もいた。

 絶望することなく、どうして100kmも離れたところまで歩いて帰ろうなどと決断し、くじけずに辿り着くことができたのだろうか?

 自分だったら、どうなっていたのかわからない。惨状に圧倒されて、きっと萎縮してしまったに違いない。あの時、どんな状況に直面して、何を考えたのかを会って聞いてみたいとずっと願っていたのだ。

「志津川の町が津波にやられるのは、停めたパジェロの脇から眺めていましたよ。第一波と第二波が渦巻き状になって建物を飲み込みながら陸地の奥の方まで進んでいきました。私のいたホテルは、位置関係からなのか地形からなのか波がブツかってくるのではなく、下から水位が上がってくるだけだったので大浴場のガラスが割れて浸水するだけで済みました」

 そのホテルは千葉さんの釣りの定宿で、あの日は北海道から来た友人と一緒だった。

「地震の直後は、まだ携帯電話のショートメールは通じていたので、家族と仕事仲間に“津波あり 志津川の町全滅”と打ちました」

 すぐに携帯電話は通じなくなり、電気も水道もガスも途切れたまま、山側の保育園に避難して3日間を過ごした。千葉さんはホテルの従業員や警官と一緒にブルドーザーを操縦してガレキ撤去作業を行った。陽が暮れてからは、焚き火で雪を溶かし、そのお湯を空のペットボトルに詰めて即席の湯たんぽを作って暖を取った。

 海沿いの国道45号線の下りは三陸鉄道のレールが落ちて道路を塞ぎ、上り方向では橋が落ちている上に陥没しているところが多く、パジェロでも進むことはできなかった。山側の道路も崩壊や陥没による行き止まりばかり。

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「これは歩くしかないなと志津川の先から山道を行きました」

 志津川を朝6時に出発し、東和町米谷、中田町と歩き、途中で通り掛かった軽トラックに乗せてもらったりしながら午後2時には100km離れた地元の一ノ関駅に着いた。

「その時に、下手に動くよりは他の人たちと一緒に志津川の避難所で救助されるのを待った方がいいとは考えませんでしたか?」

「そう考えることもできたと思いますよ。実際に、そうした人の方が多かったです。でも、私の場合は、友達が北海道に帰らなければならなかったので、ただ待っているという選択はありませんでした」

 翌日、大渋滞の末に友人を秋田空港へ送り届け、千葉さんも自宅と農場に帰れた。幸いに、どちらにも被害はなかった。

「たしかに、山を越えて100km歩いてなんて、“遊び人”じゃないとできないかもしれないですね。ハハハハハハッ」

 遊び人とは、アウトドアーズマンのことだ。千葉さんにとって、釣りやキャンプや山登りはお手のものだからだ。それまでパジェロで走って、地理を知り尽くしていることも100km歩けた理由のひとつだろう。

※写真は一部2011年3月取材時の物を使用しています。2011年3月取材時の記事へ

なぜ、“運命のクルマ”なのか?

 パジェロの次のクルマはすぐに決まった。発表されたばかりの三菱アウトランダーPHEV(プラグインハイブリッドEV)だ。

「(アウトランダーPHEV発表の)話しを聞いて、迷わずオーダーを入れましたよ」

 アウトランダーPHEVは家庭のコンセントから充電できるプラグインハイブリッド車だ。

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「エンジンはタイヤを駆動するのと同時に、発電機としての役割も担っていると聞いて、“これは私にとって運命のクルマだ”と確信したんですよ」

 なぜ、“運命”なのか?

「志津川のホテルで被災した時に、私のパジェロにいつも積んであるイカ釣り用の発電機から電気を引いてロビーを照らして明るくして、一緒にいた人たちの携帯電話を充電することができたんです。灯りとショートメールでつながることが、みんなを元気にすることができました。あらためて電気の持つちからの大きさを知りました。アウトランダーPHEVならば、それをもっと有効に使えるわけじゃないですか」

 災害を望む人などひとりもいない。だが、仮に再び被災したとしたらアウトランダーPHEVによって被害を確実に減らすことができることを千葉さんは身をもって確信した。だから、“運命のクルマ”なのである。

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  アウトランダーPHEVは100Vの交流電源(1500W)を搭載しているので、車内にふたつ設置されたコンセントに消費電力の大きな家電製品をつなげて使うこともできる。その能力は、満充電状態では一般家庭で消費される約一日分相当の電力供給が可能となる。さらにエンジンを掛けて発電すれば、約10日分もの電力を供給することができる。

「それに、四駆じゃないですか。言うことはありませんよ」

 パジェロ50万km感謝の宴で、三菱自動車の開発担当者に訊ねていた。

「4個のモーターで四本のタイヤを駆動する四輪駆動の電気自動車って造れないのですか?」

 その時は、漠然とした願望のような話しだったが、4個インホイールモーターではないにしてもアウトランダーPHEVとして実現した。

「使い方の夢が拡がりますよね。どんな山の中でも電気を使えるのですから、これまでの“クルマ”というものを超えた働きをしてくれるでしょう」

 納車を心待ちにしていたが、リコールで遅れた。駆動用電池に発生した不具合が4件発生したことにより、生産が停まってしまったからだ。不具合の原因と対策について記したメーカーからの報告書を読みながら、千葉さんは待っていた。

 その間は、3年前にパジェロの予備役として10万円で購入していた10数万kmを走った三菱デリカスペースギアに仕方なく乗っていた。

「人間の作るものに100パーセント完璧なものはないし、初めての技術なわけだから、不具合とかがあったとしても我々がフィードバックして良いものにしていけばいいじゃないですか?」

 家族がeKワゴンに乗っているから、プラグインハイブリッドEVシステムを軽自動車に搭載すべきだと早くも持論ができ上がってきている。

「軽はエンジンで走らなくてもいいから、発電だけすればいい。そうすれば航続距離だって心配要らなくなるじゃない!?」

 レンジエクステンダー付きEVということだ。

海外ではすでに実用化されている。

「やっぱり、そうなんだ。軽自動車でそれをやれば、(マーケットシェアを)全部取れちゃうよ。それだけスゴい技術だよ」

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 新しいオモチャを与えられた子供のように、千葉さんはいまアウトランダーPHEVに夢中になっている。

「長い上り坂でも、なかなかエンジン掛からなくて最後にちょっとだけ掛かったりする。ハイブリッドのクセというか、仕組みがもっとわかりたいね」

 仕事に遊びに年間3万5000kmは走るから、

特性を把握するのもすぐだろう。

「高いなんて思いませんよ。予想していた通り、これならすぐにモトが取れる」

 これまで軽油代に毎月6万円費やしていたのが、ガソリン代1万円プラス電気代1万円合計2万円で済む。浮いた4万円をローンに充てればすぐに返済できるというのが千葉さんのシミュレーションだ。

「海釣りと花見」

 季節の魚と花を求めて休みの日はクルマを走らせている。津波によって海中の環境が変わってしまったのか、千葉さんが追い掛けている魚はまだ東北の太平洋岸には戻ってきていない。だから、もっぱら日本海側や北海道で釣り糸を垂らしている。

「いつどこで何の花が見頃か私は知り尽くしていますから。東北六県に花壇を持っているようなものですよ。ハハハハハハッ」

 コスモスとダリアがこれから満開になるそうだ。花が好きだなんて初めて知ったけれども、いかにも自然とともに生きている千葉さんらしい。

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