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ハロー、CQ、CQ 伊東大輔さんと三菱パジェロイオ(2004年型 10年16万9000km)

※お客様より了承を頂戴し、ナンバープレートを隠さず掲載させて頂いております。

静岡なのに寒冷地仕様を注文

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 待ち合わせ場所の静岡三菱自動車販売株式会社藤枝店で、伊東大輔さん(39歳)は愛車の三菱パジェロイオのエンジンオイル交換を行っているところだった。

「エンジンオイルは4000kmで必ず交換するようにしています」

 4000kmとはメーカー推奨時期よりも少し早いような気もする。

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「エンジンを掛けたら、2分間はそのままアイドリングしてから走り出すようにしています。2分間でオイルがエンジン全体に行き渡りますから」

 暖機運転は運転しながら行うべきという考え方もある。取扱説明書に“暖機運転は不要です”と記してあるクルマもあるくらいだ。僕は、暖機運転中に発生する排ガスをなくし、周囲への騒音をなくすために暖機運転はせずにすぐに発車して、ゆっくりと走ることにしている。考え方がふた通りある。

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 伊東さんは、新車で購入した2004年型のパジェロイオに10年16万9000km乗り続けている。その前は、中古の三菱ギャランVR-4に乗っていた。

「遊びのクルマはダメだ。認めない」

 はじめはパジェロイオのようなSUVが欲しかったのだが、父親から反対にあってギャランVR-4にしたといういきさつがあった。“遊びのクルマ”というのは言い得て妙だ。

「VR-4にも憧れていましたから、特に父に反発することもありませんでした。4ドアセダンなのに、世界でも珍しい4輪駆動で4輪操舵という組み合わせを搭載しているVR-4のハイテクイメージに惹かれていました」

 ギャランVR-4を8年11万km乗り、ようやく待望のパジェロイオに買い替えた。VR-4のエアコンの調子が悪く、リヤのショックアブソーバーも不具合が続いたからだった。

 パジェロイオの見積もり金額は269万7720円だったが、値引きなどで支払い総額は240万円。ここには、寒冷地仕様の代金1.5万円も含まれている。

「アマチュア無線機を搭載するので、その分の電力消費をまかなうために大きなバッテリーと発電量が大きなオルタネーターが装備される寒冷地仕様を注文しました」

 他にも、容量の大きなヒーターや冷却水の濃度が濃くなるなどが寒冷地仕様の違いである。

モロッコとフォークランドの人と交信

 伊東さんはアマチュア無線家だったのだ。中学生の頃に、僕もアマチュア無線家に憧れていた。

「ハロー、CQ、CQ」

「ハロー、CQ、CQ」

 自分の声を電波に乗せて呼び掛け、遠いアフリカや南米など地球の反対側にいる人々とでも自宅の机に座りながら交信できるだなんて心ときめかせていた。無線免許を取得するための勉強が難しいと聞いて怖じ気付いた意気地なしだったけれども、今でもボディにコールサインを貼ってあるクルマを見たりすると、どんな人と交信しているか気になってしまう。

 エンジンオイルの交換作業が済むのを待つ間、アマチュア無線の話を聞いた。

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「今月はアフリカのモロッコの人や、南米のフォークランドの人と交信することができました」

 専用の無線機から短波を送受信して交信するのだけれども、気候や時間帯などによって聞こえ具合も変わってくる。

――こちら○○○(コールサイン)ですが、どなたかいませんか?

――こちら△△△です。

 無線機のダイヤルを回して周波数を変えていきながら、ノイズの中から信号をつかまえ、返答する。受け答えは、外国人だったら基本的には英語。まとまった話をすることもあれば、「他に待っている人もいるので」短く済ます場合もある。QSLカードという受信状況を報告するカードを送り合ったりもする。

 現代では、Eメールやインターネット、携帯電話など、コミュニケーションのツールが増え、遠い外国の人とも簡単に確実に通信をすることができるようになった。ダイヤルを回して、雑音の中で発信しているかいないかわからない相手の電波をなんとか捕まえないと交信できないアマチュア無線は、なんともアナログでアナクロに思えてしまう。そんな不躾な僕の質問にも、伊東さんは優しく丁寧に教えてくれる。

「確かに、おっしゃる通りですね。メッセージを送受信するのに確実で便利な通信手段が今はたくさんあります」

 でも、アマチュア無線の楽しみは他の通信手段にはないものだと伊東さんは言う。

「ダイヤルを右に左に回して、ノイズの中から微かな信号をキャッチして、音声が聞こえてきた時の喜びは大きいです。便利な通信手段が増えてもアマチュア無線を楽しんでいるという仲間意識による安心感も大きい。楽しみだけでなく、災害の時には他の通信手段がシャットダウンしてしまっても、アマチュア無線は使えます。東日本大震災の時も、困っている人たちの役に立てましたから」

 伊東さんは自宅にも無線機を据え付けてあるが、もっぱら楽しんでいるのはパジェロイオの中だ。毎日の通勤途中に、伊東さんは地球の裏側の人たちと交信している。

「固定式の無線機は出力が200ワットですが、車載式は50ワットしかないので、その分余計に電波をキャッチするのが難しくなります」

 だから、伊東さんはパジェロイオで交信する方に余計に強くモチベーションを感じてしまう。

「パジェロイオから、6大陸の人たちと交信しましたよ」

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茶畑の上の山で

 エンジンオイル交換が終わったので、パジェロイオで近くの山に連れて行ってもらった。周囲が開けているので電波をキャッチしやすく、休日などに伊東さんは時々ここを訪れて交信している。

 しばらく走ると、林道に入っていった。上り勾配の道が細くなり、両側の木々が影を作って薄暗くなっているところに落ち葉が溜まり、前日の雨が乾かずに滑りやすそうだ。伊東さんはパジェロイオを一旦停止させると、トランスミッションをニュートラルにし、トランスファーで4輪駆動を選んだ。2輪駆動でも上っていけそうだったが、伊東さんは走り慣れた道でも確実を期した。慎重で、マジメな性格が表れている。

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「ホラッ、FMヨコハマが入りますよね。遠くの放送局の電波が入るということは外国からの短波も聞こえやすいという目安になるんです」

 いつもと同じように、ルーフレールに5メートルのアンテナを付け、電波を探った。

 探ってみるが、それらしい信号はなかなかキャッチできない。

「パジェロイオを選んだのは、このルーフレールを選べる点もありました。アンテナを取り付けるためです。ギャランVR-4ではトランクフードに1.5メートルのものを左右に2本取り付けていたために、使っているうちにスキマが広がって雨水が浸入するようになってしまいましたから」

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 天気が良かったので、山の頂上にはドライブ客が訪れ、記念写真を撮って帰っていく。それほど高い山ではないが、富士山から南アルプス、駿河湾、東名高速と第二東名などを一望できる地元の人たちの憩いの場だ。

 伊東さんのパジェロイオにはもうひとつアマチュア無線用の改造が施されている。寒冷地用の大きなバッテリーの他に、もうひとつバッテリーを追加した。

「電圧降下は電波の質に悪影響を与えるので、サブバッテリーを追加することにしました。アマチュア無線機には20アンペアほどの電流が流れるために、シガーソケットは使えませんので太い電線を使っています。安全のために、ディーラーさんに取り付けなど作業の一切をお願いいたしました」

 電気関連企業に勤めており、電気は専門でもあるので、自分でも工作できそうだったが、安全を優先してディーラーに依頼した。ここにも伊東さんのマジメで慎重な人柄が表れている。

「友達などには、“カタ過ぎるくらい”って言われています。ハハハッ」

 でも、マジメで慎重というのは良いことだ。だから、パジェロイオのコンディションも完全に把握し、早め早めに消耗部品や油脂類を交換している。トラブルからのフィードバックも的確に行われて、そこにも物事への取り組み方が表れている。

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 例えば、走行距離がまだ3万7000kmあまりの頃に、帰宅中の国道を走っていて、大きな川を渡る橋の上で突然エンジンから大きな振動が伝わってきたことがあった。

「4気筒エンジンが3気筒になってしまったんじゃないかというくらい、ガクガクしました。コンビニの駐車場に駆け込んで取扱説明書に書いてあった通りに、いったんエンジンを切ってもう一度掛けたら直りました」

 翌日、ディーラーで確認してもらうと、プラグの点火不良ということだった。

「それ以来、車検ごとにプラグは4本とも交換することにしていて、同じ症状は出ていません」

エンジンオイルのボトル券

 フィードバックといえば、ギャランVR-4に乗っていた時の経験も現在のカーライフに生かされている。

 大手のカー用品店でエンジンオイルを交換した一カ月後、走行中にドレインボルトが外れてオイルが全部流れ出てしまったことがあった。

「しっかり締まっていなかったことが原因でした。それからは三菱のディーラーで“ボトル券”を購入して交換するようにしています」

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 ボトル券とは、藤枝店で販売しているエンジンオイル交換のプリペイドサービスのことで、1万2960円の券を購入すると20リットル分のエンジンオイルを交換できる。一回ごとに行うよりも約半額になる。伊東さんのように4000kmごとにキチンと交換する人にはお得なプランだ。

 なにごとも計画的に進めていく伊東さんなので、次に乗るクルマのことももう手配が済んでいる。

「前回の13万kmでの車検で、パワーステアリングとリヤのショックアブソーバーからオイル漏れが見付かり、ポンプとショックアブソーバー4本、タイヤ4本を交換して快調に走っています」

 だから、2015年3月の次の車検も通して乗り続けるつもりではいる。それでも次のクルマを検討しているのは、やはり伊東さんのマジメと慎重な人柄の表れからだ。

「往復80km弱の通勤路の国道バイパスで停まってしまうと退避場所がないんですよ。特に、1kmもあるトンネルが心配です。また、この10年間で新型車の燃費が格段に向上していますからね」

 見積もりを取ってあるのは、アウトランダーPHEV。

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「プラグインハイブリッドにも興味があります」

 伊東さんは自分の新しモノ好きを否定しない。

「イオのゴム類の劣化や電子機器に使用されている電解コンデンサーの液漏れによるトラブルなども心配です。20万kmぐらいが限界でしょうか」

 マジメで慎重だからなのだろうか、トラブルを過度に恐れて、計画的過ぎるほど計画的に先回りして準備しているように僕には見えてしまう。

 しかし、そうではなくて、実は伊東さんはパジェロイオ思いなのだ。

「若い頃の仕事で、間接的にイオの開発に携われたことがあって、特別な思い入れとこだわりを持っています。それもあって買ったのかもしれません。だから、今後もしトラブルが頻発するようなことになっても、離れがたくなってしまうかもしれませんね」

 早めのオイルやパーツ交換は無意識のうちのパジェロイオへの愛着の表れだったのだ。

 アウトランダーPHEVへの乗り換えについても、伊東さんらしく事前の準備が進んでいる。これまで通り、車内でアマチュア無線の交信を行おうとするとプラグインハイブリッドEVシステムからの微弱ノイズが交信に影響するかもしれない。その対策を施さなければならない。鋭意、研究中だ。

「納車後だと取り付けが大変になるから、できれば納車前にパーツをディーラーに渡すなど準備しておきたいですね」

 どこまでもマジメで慎重で計画的なのである。

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編集部追記:

伊東様からアウットランダーPHEVに買い替え、弊社三菱オートギャラリーも見学されたとのご連絡と共に素敵なレポートを頂戴しました。
ぜひ、クリックしてみてください。(2015年4月)

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