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2020.02.19

埼玉県

10台プラスアルファの“三菱車論”

稲葉昭平さんと三菱コルトプラス(2005年型)

010YEARS

0124,000KM

※お客様より了承を頂戴し、ナンバープレートを隠さず掲載させて頂いております。

消耗部品しか交換したことがない

仕事から、いつ、どのように退くのか?
一日でも早く辞めたい人もいれば、やり甲斐を見出して一生を奉じる人もいるだろう。人それぞれ、仕事それぞれ。
2005年型の三菱コルトプラスに10年12万4000km乗っている稲葉昭平さん(70歳)は半年前に勤務していた会社から定年退職した。
違う会社に勤めていたこともあったが、自動車メカニックとして半世紀以上、働いてきた。特に新車開発やテスト、モータースポーツを専門としてきた大ベテランだから、サーキットで稲葉さんを知らない人はいない。
退職してしまったとはいえ、少し古いクルマや専門知識を要するクルマが入庫した際には、請われて手伝いに行ったりしている。
また、息子が運送会社を経営していて、そこのトラックの整備の手伝いなども時々頼まれたりするから、いつでも出掛けられるように自分の工具はコルトプラスに載せてある。

コルトプラスは通勤やサーキットへ行くときなどの仕事と、日常的な使い途で距離を重ねてきた。

「まったく壊れないんです。消耗品を交換したことしかありません」

初めて話した時から、コルトプラスのことになると稲葉さんは壊れないことをずっと強調している。70歳には見えないほど若々しく、笑顔が人懐こい。

「丈夫なんですね。クルマというのは走行距離が増してくると、部品が壊れなくてもブッシュなどが劣化してくるものなのです」

ゴムや樹脂製のブッシュが振動と経年変化によってヒビ割れてくるのが常だという。

「それが、このクルマでは起きていないんです。ホース類の硬化や劣化もありませんよ」

そう言いながらボンネットを開け、ラジエーターホースを指先で握って、柔軟性を失っていないところを見せてくれる。

ヒントになった戦術

コルトプラスのエンジンマウントは3か所に付いている。

「他車の多くは4か所です。3か所でも、コルトプラスは何の問題も引き起こしていないことは、このクルマで日々実感しています」

そこで、稲葉さんは次のレースのためにひとつのアイデアを思い付いた。メカニックを担当していたスーパー耐久選手権に参戦するチームが走らせる三菱ランサー・エボリューションのレースカーのエンジンマウントをひとつ、固定することを止めてみたのだ。

「軽量化できますし、整備やトラブルに対処する時間を短縮できるのではないかと考えました」

耐久レースでの整備時間の短縮は順位を大きく左右する。十勝24時間レースではエンジンやトランスミッションなども交換する。
他のレースでも、予選が終了した後にはエンジンマウントの締め付けを緩めて各種の整備を行うから、4か所が3か所に減っただけで効果は大きい。

「ひとつ緩めてまた締め直すのに15分から20分は必要としていましたから、ひとつ省けただけで時間短縮の効果はとても大きかったです」

レースや予選タイムアタック中のレーシングカーの各部分にはさまざまな強い力が掛かる。エンジンマウントを3つに減らしたのは良いが、それが原因で他の部分にダメージが及び、トラブルの原因になってしまうかもしれない。
しかし、そんなことは百戦錬磨の稲葉さんは承知の上だ。国内レースだけではなく、サファリラリーに始まって、パリ・ダカールラリー、マカオ・グランプリなど世界中のモータースポーツの現場で戦ってきた。
 特に耐久レースでは、同じことの繰り返しでは上位は望めない。何か新しいことにトライすることで他車から優位を得ようとする戦術だった。自身のコルトプラスでの経験をヒントに一歩踏み出した戦術が功を奏したのだ。

「コルトプラスはこれだけ走ると、通常、ドライブシャフトブーツの寿命が来て破れるものですが、まだ破れていません」

モータースポーツのメカニックだけあって、指摘がとても具体的だ。

「シャシーがしっかりしていて、サスペンションが良く動いてショックを吸収するので、ガタが来ていないのも優れています」

自分で工夫したい

もうひとつ乗り続けている理由としては、レギュラーガソリン指定で燃費に優れているからだという。

「一般道でも高速道路でも、14から15km/リッターです」

助手席に乗せてもらって、近くを走った。確かに、ガタガタ、ゴトゴトといった異音の類はどこからも聞こえてこない。スムーズに、穏やかに走っていく。
カーナビモニター画面の左上側がプラスチック板で囲われているように見えるのは、直射日光で画面が見えなくなるのを防ぐためのヒサシで、稲葉さんが自作したものだ。
同じように、アームレストも自作した。パイプにウレタンフォームを巻き付け、ビニールテープで太さを増してドリンクホルダーに嵌め込むようになっている。

「長距離を走る時には、これを使うと左腕がラクですよ」

そのようにしてコルトプラスを気に入って乗り続けている稲葉さんだが、自分なりに適合させたい点も把握している。左側のドアミラーを見やすくしたいのだ。

「鏡面に写る範囲がもう少し広いと助かります」

輸出仕様などで鏡面の曲率が違うものがあったりしないのか調べてみたが見付からなかった。これはなんとか改められないか引き続き情報収集を続けている。
運転操作に関係するところで、このままで問題ない人もいるだろうけれども、自分がより安全に運転しやすくするためには改善された方が良いと稲葉さんは考えている。見逃されがちだけれども、レースメカニックらしい実際的な指摘だと思う。

10台乗った

駐車場に戻ってきて、稲葉さんがこれまで乗ってきたクルマの話になった。

「三菱のクルマはたくさん乗りましたよ。思い出してみましょうか?」

お願いします!

「最初に乗ったのが、コルト1100。次が、初代ミラージュ。カッコ良かった。次がギャラン1500、これはオートマでした。続けてギャランの“16L”というのがあったんです、ええ。次が、ギャラン・ラムダ。2ドアのスペシャリティカーですね。ラムダもカッコ良かった。その次に、前からずっと乗りたかったジープに乗りました。そして、ギャランVR-4を新車で買いました」

あらかじめクルマ歴をお聞かせ下さいとお願いしてあったので、スラスラと出てくる。

「VR-4の頃は忙しくて、レースをいくつも掛け持ちし、オフシーズンにはパリ・ダカールラリーのような海外イベントに出掛けていました。世の中の景気も良かったので、新車でVR-4を買うことができました。ハハハハハハッ」

VR-4を買ったのは、オンロードタイプの4輪駆動システムをはじめ、日本車最強力パワーの4気筒ターボエンジンなどのハイテク技術が搭載されているからだった。それらがもらたす高性能と、じっくりと付き合ってみたかったのだ。

「高性能の基準を書き換えましたね。4輪で駆動して、速度を落とさずに正確に安全に走るクルマなんて、それまでありませんでしたから」

まさに、先進技術の賜物だ。続けて、稲葉さんはミニカ・ダンガンに乗り換えた。

「吸排気5バルブという超精密なバルブ開閉機構に興味を掻き立てられて買いました。ついつい高回転まで回してしまっていましたね」

次が、ランサー・エボリューション7のATモデル。

「エボはレースでも整備していましたが、7、8、9とモデルを経るごとに4駆システムが熟成していきましたね」

次に、参考のためにヨーロッパ車に2台乗り、このコルトプラスに続いていく。

「昔から、三菱自動車は自分たちのクルマを“尖らせ”ようとしてきました。他にない個性であり、性能ということですね。でも、壊れてしまったら、個性だなんて寝言でしかありません。個性と信頼性を両立できるクルマ造りを一貫して進めてきたのが三菱のクルマなのではないでしょうか。仕事で携わり、自分でも10台乗った結論です」

稲葉さんの、この“三菱車論”にはとても説得力があると思う。

「次は、エクリプス クロスに乗ってみたいですね」

手伝いに行かない時は、鯉釣りとサウナに行くのを楽しみにしている。

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