車両設計部 和田 宗助

感性にうったえかける走りの質感を求めた

S Editionではボディの剛性感がアップし、より質の高い走りを実現

新しいアウトランダーPHEVの標準モデルは、足回りのチューニングを実施するにあたりボディは変更していません。S Editionではさらに質の高い走りをテーマにしておりボディの剛性を高めています。剛性感を高めることでハンドルを切ったときにクルマが素直に追従する感覚が得られました。

様々なハードルを越え剛性を高める最適解が、構造用接着剤の追加だった

アウトランダーPHEVは、モデルチェンジの度に剛性に改良を加えてきました。2014年モデルではフロントサスペンションの取り付け部の剛性アップ。2016年モデルではフロントサスペンション取り付け部のさらなる剛性アップと、リヤサスペンションの取り付け部の剛性アップを行っています。

そして今回、更なる補強を行うにあたってできることは何かを考えました。S Editionは日本だけでなく欧州でも発売されるモデルです。世界各国で安全に関するルールは異なり、また、1年という限られた開発期間の中で、これまでのように剛性をアップさせる手法。たどり着いた答えが構造用接着剤の追加でした。

しかし、構造用接着剤はクルマ作りの工程において非常に手間と時間がかかります。また、今までの製造ラインにも構造用接着剤を使う工程は無かったので、製造部門のスタッフと何度も意見のすり合わせを行いました。その結果、「より良いクルマを作りたい」という想いが重なり合い、構造用接着剤による機能強化を実現することができました。

構造用接着剤で、ボディのねじれを抑える

例えば箱をねじったとき、小さい箱ならねじれは小さいですが、大きい箱であればねじれは大きくなります。SUVはセダンと比べると車内空間が広く、大きいねじれが発生するため、ハンドルを切って少し遅れてからボディが操縦に付いてくるということが起きています。そこで、構造接着剤を使用してボディを強化することでねじれを最小限に抑え、ハンドルを切った際のボディの追従性を高めて、応答遅れのないスッキリとした操縦性を実現しています。

データの解析結果と人のフィーリングで剛性感を生み出すこと

剛性を高める開発手法として、データをもとに弱いポイントを解析することと、人の感覚で確認する2つの工程で絞り込みを行いました。データの解析から、ねじれが発生しやすい箇所はラゲッジスペースのある車体の後部や、リヤタイヤの上側あたりであることは分かりました。しかし、やみくもに構造用接着剤を追加してボディを固めすぎるとかえって乗り心地が悪くなるため、強化するポイントを絞り込みながら、テスト走行でドライバーにフィーリングを確認してもらいました。

「どのポイントを強化すれば最も安心できる乗り心地が得られるか?」という、データだけでは分かりにくい人の感覚も大切に考える。単なる「剛性」ではなく「剛性感」。フィーリングの「味」の部分を高めるとき、構造用接着剤は活きてきます。言葉では伝えにくいのですが、感性にうったえかける「走りの質感」を高めることにこだわりました。

ドライバーにも優しいという付加価値

アウトランダーPHEVはEV走行によって環境に優しいのはもちろん、乗員保護性能や衝突安全性能などを備えた人にも優しいクルマです。更にS Editionでは構造用接着剤によって操縦安定性が向上し、ドライバーにも優しいことが付加価値として新しく追加されたと考えています。

日常の走行では小さな路面の変化があってもボディ剛性によって安定し、高速道路でレーンチェンジをして追い越し車線に入るときなどに、ボディがしっかりしているからクルマがしっかり曲がってくれる。安定感や安心感はハンドルを握っていて実感できる要素なので、ぜひ体感していただきたいと思っています。